第36話 裏

「わぁ、長いね。」


 私は水槽の中でプカプカと浮かんでいるクラゲを見てそう溢した。あの長いのって触手だっけ?分かんないや。


「クラゲって脳がないから何も考えずに生きてるんだよな。」


「そうなんだ。じゃあ、ただ餌食べてプカプカ浮かんでるってこと?」


「そうなるな。」


 じゃあ食事はお腹が減ったから食べるんじゃなくて生きるための作業なんだね。


「でも、何も考えずに生きれるっていうのは羨ましいな。」


「そうかなぁ。私は嫌だな。」


 逆に言えば何も考えることができないってことになるよね。それだと好きなこととかも考えれなくなっちゃう。1番は……


「だって何も考えないなら葵のことも考えれないんでしょ?そんなの嫌だし。」


「………」


「な、何か言ってよぉ」


 結構思いきって言ったのに葵は固まっちゃった。私何も変なこと言ってないよね。好きな人のことを考えたいのはみんな一緒のはず。


「……やっぱ俺もクラゲは嫌だな。」


「何で?」


「玲奈と一緒だよ。玲奈のことを考える時間がなくなるから。」


「っ~~~~~~!」


 葵のばか、ばーかっ。私が先に言ったのにやり返すなんて卑怯だよ。急に言われたからどうすれば良いか分からないじゃん!


「どうした?」


「なんでもないよ!早くお土産コーナーに行こ!」


 早く次のとこに行こう。そうすれば顔に貯まったこの熱も何処かに行くよね。えっと、お土産コーナーは何処かなぁ?


「………お土産コーナーどこだっけ。」


「分からないのかよ。」


 赤くなった顔を見られたくないから葵の前を歩いてたんどけどお土産コーナーの場所知らなかった。また自分で恥ずかしい要素作っちゃった。


「ほら、お土産コーナーはこっちだ。」


「……っ!うんっ。」


 葵が、場所知ってるから案内してくれる。歩くときにさりげなく手を繋いできた。葵から手を繋いでくるのは珍しいから嬉しくなっちゃう。


 お土産は何買おうかなぁ。




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「いっぱいあるね。」


「結構広いな。」


 お土産コーナーは思ってたよりすごく広かった。それに、私達以外のお客も楽しそうにしている。


 どんな商品があるんだろう。恋愛に関してとかの商品とかもないかな?あったら見てみたいな。


 でも、ただ見るだけじゃすぐ終わっちゃうよね。あ、そうだ!


「ねぇ。」


「どうした。」


「お互い相手のお土産選んで後から渡しあわない?」


 私が葵に渡すお土産を買って、葵が私に渡すお土産を買う。こうすれば相手のことを思って買うのを考えれるし、貰ったものの意味とか考えれるよね。


 まぁ、私が葵からのプレゼントが欲しいだけなんですけどね。それに、葵にプレゼントを渡して喜ばせたいな。


「いいぞ。」


「じゃあ、30分後にここに来てね。」


 30分の間に葵に渡したいって思えるもの探さなきゃ!




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 30分後……


 うぅ、これで大丈夫かな。でも、これで私が葵に抱いている気持ちの少しでも伝われば充分かも?


「すまん、遅れた。」


「大丈夫だよ。私も今終わった感じだから。」


 私が集合場所についてからしばらくしたら葵が急いで向かってきた。ここから遠い場所にいたのかな?でもお土産コーナーからは近いはずなんだけど……


「じゃあ、お互い渡しあお?」


「それなんだがワクワク感が出るように家についてからにしないか?」


 ここまできてお預けされるなんて。あ、でも、今渡されたら後からぐだくだになっちゃうかもしれないし……


 それに、後からの方が楽しみが増すよね。


「確かにドキドキするかも。私もそうしたいな。」


「なら、家についてからってことで。」


 葵はいったいどんなのを買ったのかな?恋愛感情が伝わるものを1つくらい買ったりしてないかなぁ。


「そうだ、もう昼だしご飯食べるか。」


「そうだね。気づいたらあっという間だったよ。」


 そうだった!もうお昼なんだよ。楽しいことがあると時間があっという間だ。嫌なことほど長く感じるのに。


「ここにもあるみたいだしそこにするか。どんなものがあるだろうな。」


「うーん……海鮮丼とか?……うぅ、やっぱりなしで。」


 自分で言ったものの無いなって思い返した。水族館なのに魚を使った料理が出てくるなんて可哀想だよ。


「美味しいものだったら良いな。」


「うんっ。」


 魚を使ったもの以外で美味しいものあると良いな。


 その後、水族館無いのお店でシーフードカレーを食べた。と言っても水族館に居ない魚を使ったものだから安心して食べれた。





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「もっと水族館に居たいって思っちゃった。」


「あれだけ楽しんでるとそう思うだろうな。」


 ご飯を食べた後は適当にふらふらして良い時間になったから電車に乗った。また行きたいなぁ。


「葵と一緒だからより楽しめたのかもね。」


「そ、そうか。」


 だけど、楽しみすぎて今は疲れちゃった。それに加えて電車の心地良い揺れもあってどんどん眠くなってきた。


「うぅん……っは!」


 危ない危ない。もう少しで寝ちゃうとこだった。朝も寝ちゃったから帰りくらいは起きなきゃ。そう思ってるけど、


「もぅ……むりぃ」


「ん?……やっぱ疲れてたんだな。」


「……すぅ………すぅ」


 私の意識は深いところへ落ちていった。





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「家にとーちゃく!」


 やっと着いたぁ。帰りは家に着くのが長く感じた。やっぱり電車の中で少し寝ても、疲れは取れないよね。


「行きは良かったが帰りは辛く感じたな。」


「楽しんで疲れたからかな?」


「そうかもな。」


 葵も疲れてたんだって。葵は私と違って寝てないから私より疲れてる気がする。今日は早く寝て欲しいな。


「じゃあ、お土産交換だよっ。」


「ああ、そうだった。」


「じゃあ私から。はいっ、まだ開けないでね!」


 お土産を渡すけど土壇場で恥ずかしくなっちゃって家で開けて貰うことにした。ここで開けられてあまり良い感じじゃなかったらへこんじゃうし。


「じゃあ俺のも家に帰ってから開けてくれ。」


 そう言われて葵から袋を貰った。何が入ってるんだろう。早く開けたくなってきた。


「明日葵の家で感想言い合うのはどう?」


「無難なことしか言えないと思うがいいぞ。」


「やたっ。じゃあそうしよ。」


 私のプレゼントが葵から見てどんな感じなのかやっぱり気になるから明日聞くことにした。どう思うんだろうなぁ。


「じゃあね!」


「じゃあな。」


 家の前で別れて家に入ってく。この時間ならまだご飯まで時間があるから先に見ちゃおうかな。

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