第19話 裏
私は今葵の布団で丸くなって、正確には亀になってる。今も先日の私の行動を振り返って恥ずかしくなっている最中だ。
トン、トンと階段を上ってくる音が聞こえてきた。ひっ、もう来ちゃうの?おばさんとのお話もう終わっちゃったの?私まだ心の準備がっ。
キィ
「……なんだこれ?」
ドアを開けて葵が話した一言目は疑問だった。そうだよね。部屋に亀がいたらそう思うよね。でも今、葵の顔なんて見れないし……
「玲奈、何してるんだ?」
ビクッ!
私の名前を呼ばれただけで大袈裟な反応をしてしまった。そんな反応をした後自分でも驚いちゃった。
「何をそんなに恥ずかしがってるんですかっと。」
バッ!
「ひゃあ!」
葵が話すのと同時に私が被っていた布団を引っ張りあげる。突然の事だったのでビックリして丸くなった状態を維持する私。
「おいおい、どうしたんだ?」
「……ぅの…………ら。」
どうしたと言われたら葵のせいとしか言えない。完全に八つ当たりだけど葵の気持ちを知らなければこんなに恥ずかしがることはなかったはず。葵の気持ちを知れて嬉しかったけどね。
「すまん、もう1回言ってくれ。」
「だっ、だからっ!葵のせいなんだから!」
私は八つ当たり気味に大きな声で喋る。あ、今の声おばさんにも聞こえたかも……もうちょっと小さくして喋れば良かった。
「俺のせい?俺なんかしたっけ?」
「うぐっ……」
葵の問いに私は言葉を詰まらせる。葵のせいと言うものの実際には何もしていないから喋れるわけがない。
「な、なにもしてなぃ……け、けどぉ。」
「けど?」
何もしてない、けど盗み聞きした私の心が恥ずかしくてたまらない。でも盗み聞きした何て言えないし……
「……やっぱり何でもない。」
「少し気になるが、まぁ良いか。」
結局口に出す言葉が出てこなかったから有耶無耶にすることにした。葵も深くは聞いてこなかった。
「……それ、今日俺が買ったやつ、だよな?」
「……っ!う、うん。可愛かったから着てみたの。」
「見せてくれないか?」
「えっ?……分かった。」
話を有耶無耶にしたところで葵が私が着ているパジャマに気が付いた。葵が買ってくれたパジャマ。葵はそれを着た私を見たいというので身体を葵の方へ向ける。
「お、おお。」
「どっ、どうなのっ。」
葵は感嘆の声?を漏らしたけど可愛いとか似合ってるとか何も言ってこない。せめて一言でも言ってほしい。
「その……フードも被って貰って良いか?」
「う、うん。」
可愛いとかの言葉を今か今かと待っていたら葵口から出たのは追加注文だった。それをして可愛いって言って貰えるならって思ってフードを被った。
パシャ!
「あ、ちょっと!」
「悪い。めちゃくちゃ可愛いかったからついな。」
「消してよぉ。」
私は葵に飛び付いて葵を叩く。結構強めに叩いているつもりなんだけど叩いた音はポコッ、ポコッという間抜けな音しか出ない。
「むぅ、は・や・く消してよぉ。」
ポコポコ、ポコポコ
「あ、おい。そんなに暴れないでくれ。」
ギュッ
「うにゃぁ!」
今度は叩きながら強めの感じで喋ったんだけど、葵に暴れるなと言われて抱きしめられた。突然だったから変な声が出ちゃった。
「丁度良いな。」
「そ、そう!?」
「今から玲奈のお願いを実行するから。」
抱きしめられたことに慌て、混乱する私。葵は今から私のお願いをすると言った。えっ、ちょ、ちょっと待って。まだ、準備が……
なでなで、なでなで
「……ぅぅ。」
「すまんな。丁度良い位置に頭があったから。」
心の準備が出来てないのに、って言おうとしたら頭を撫でられた。気持ち良かった、けど恥ずかしくて唸るような声しか出せなかった。
そこからしばらく、私はそうされていた。
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1時間後……
「ねぇそう、もっとぉ。」
「はいはい。」
私は自分から頭を撫でて貰いにに行くようになっていた。えへへぇ、気持ちよくて止められないよぉ。
なでなで、なでなで
「えへへぇ……きもちぃ~。」
「……」
また撫でて貰えた。でも葵が疲れてるからか途中途中で撫でれるやめるんだよね。もっと長く続けてほしいのに。
「玲奈、こっち見て。」
「んぅ、どぅしたのぉ。」
パシャ
葵の胸に埋めていた顔を上げると、また写真を撮られた。撮られた写真には絶対顔がだらしなくなっている私が写ってるよぉ。
「むぅ、また撮ってりゅ~。駄目なんだかりゃー。」
「ごめんな。どうしたら許してくれる?」
顔もふにゃふにゃなのに、言葉もふにゃふにゃに、なってきちゃった。それに気持ちよくて段々眠くもなってきた。
「ならぁ、もっとなでてぇ~。」
「分かったよ。」
眠くなっても気持ちいいのを止めてほしくないからもっとってお願いしてみる。葵はまた撫でてくれた。
「そぅ……もっ……と。」
「眠そうだしそろそろ寝るか。」
撫でて貰ってると眠くなっていたのが更に悪化して、もう眠りに落ちそうだった。葵の声も思ったように聞こえない。
「玲奈、横になろうな。」
「んんぅ………そぅ……もっと、ギュッて……」
葵が私を横にしてくれた。けど抱きしめていたことによって密着していた身体が離れちゃって寂しくなった。
「今電気消すから待ってな。」
「はや……くぅ。」
ずっと抱きしめていたから身体の一部がなくなっみたいだった。もうほとんど意識はないけど、眠り落ちる前にまた温もりが欲しいよぉ。
ギュッ
「んふぅ……あったかぁ……すぅ。」
葵が電気を消す音が聞こえた後、横になった葵がまた抱きしめてくれた。その温もりに安心して落ちる寸前だった私の意識は完全に落ちていった。
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