第12話 裏
「どうしようどうしよう!このままじゃ寝れないよぉ」
私は今ピンチに陥っている。明日も学校なのに寝れるか分からない。だって、
葵に抱きしめられてるんだもん。
とても恥ずかしいよぉ。まさか葵がこんなに大胆になるなんて。
私はこうなった経緯を思い出した。
____________________________________________
「そいつと付き合うのか?」
葵に立ったまま抱きしめられた後、こんなことを聞かれた。付き合う?私が告白してきた人と?そんなのあり得ないのに。
「え、えと……付き合わないよ?」
私が好きなのは葵なのにあんなに自分勝手な人と付き合うわけない。そう言いたいけど、付き合うなら葵から告白してきて欲しいっていう願望もあるんだよね。
「理由を聞いても良いか?」
理由と言われても……葵が好きだからだよ、なんて言えないし……ここは無難な答えでいこう。
「そ、それはね……す、好きな人がいるの。」
「……え?」
これで葵に伝わらないかなぁ。最近は結構勇気出して行動してるんだけど、どれも結果があんまり良くないんだよね。
「そ、そいつのどんなとこが好きなんだ……」
今度は好きな人のことについて聞いてきた。私が葵を好きだってことは伝わらなかった。しかも本人に好きなとこを教えなきゃいけないの!?
「ふぇっ!?そ、それはねぇ……」
ど、どどど、どうしよう。好きな人に好きな部分を教えるのは結構恥ずかしいことなのでは?で、でもそれ教えたらもしかして自分かも?ってなるかもしれないし……
「えと……えーっと……」
葵の好きなとこ、いっぱいある。手を繋いでくれたりとか。先週の休みは添い寝とかもしたよね。
「あぅ」
添い寝を思い出したら恥ずかしくなっちゃった。私、手を繋ぐよりも一歩上のことしてたんだね。
後は、優しかったり、色々ある。
「で、でもぉ」
これを本人に言うのかぁ。でも気付いて貰えると思ったらこんなの朝飯前……かも。
「大丈夫だ。俺は玲奈の好き人の情報を他人に口外するつもりはない。」
葵がそんなことを言ってくる。これって良い感じに勘違いされてる?それなら少しは恥ずかしくもないかもしれない。私はしばらく悩んで喋ることにした。
「好きなとこはね、いっぱいあるんだ。まず……」
私は、(葵は)いつも優しくて私を優先してくれること。その他にも(葵と)一緒にいると心地良いなど色んなことを葵本人に話した。
「……玲奈はそいつのことが大好きなんだな。」
「……っ!う、うん!大好きなの!」
私は好きな人本人に向かって大好きと言った。でも葵はやっぱり私が別の人を好きだと勘違いをしている。
「……そっか。その想い届くと良いな。」
「……?う、うん……」
どこか悲しげ感じで葵はそう言った。私はそれに疑問を持ちながらも返事をする。どうしたんだろう。そう思っていたら抱きしめる力がほんの少しだけ強くなった。
「葵?大丈夫?」
私は葵の顔を見るために顔を上げる。やっぱり葵の方が身長が高いから私が見上げるしかない。
「ああ、大丈夫だ。」
「でも、なんだか苦しそうだよ?」
葵は大丈夫だと言っていたけどその顔はそうは言っていなかった。とても苦しそうだった。まるで何かを無くしてその悲しみに耐えるような……
「そうか……俺は……」
葵は合点がいったかのようにそう呟いた。本当に大丈夫なのか不安になってきちゃう。
ギュッ
「そ、葵?」
急にさっきよりも強く抱きしめてきたので驚いちゃった。より密着感が増して葵をより感じることができる。
「今日はずっとこうしてて良いか?」
葵から嘆願に近いような感じでお願いされる。それと、これが最後だからみたいな感じにも聞こえてしまう。なんだか葵が遠くに行ってしまうような気がして少し不安になってしまった。
「うん……私もこうしていたい。」
なのでつい言ってしまった。でも本心には変わりない。不安を打ち消したくて、それ以上に葵と触れ合っていたかった。
私は自分から体をグイグイ密着させた。葵も抱きしめる力を強くする。まるでもう離さないと言われているような気分。こうしていると自分が愛されてるって錯覚しちゃう。
私達はご飯の時間になるまでずっと抱きしめあってた。
____________________________________________
とりあえずここまで思い返した。思い返してみると結構恥ずかしかった。嬉しかったから良いんだけどね。
問題はご飯を食べてからだった気がする。正確にはお風呂を入った後かな?つまりさっきまでの出来事だ。
私はさっきの続きからまた思い出していった。
____________________________________________
ご飯が終わって別々でお風呂に入った後。私は未だに葵に抱きつかれていた。2人っきりになれる時はずっとこうしていた。
それもそろそろ終わりかもしれない。だって、寝る時間が近づいているから。
「ね、ねぇ。そろそろ寝る時間だよ?」
私は葵にそう言った。そろそろ寝るから抱きつくのも止めようという意味も込めて。後単純に恥ずかしさが限界だったっていうのもあるかもね。
「そうだな。そろそろ寝るか。」
うん、そうだよね。葵もいつもこのくらいの時間に寝るよね。だから離してくれるはず。私はそう思っていた。
「え、あれ?そ、そう?」
「今日はこのままな。玲奈も良いって言ってくれただろ?」
私が疑問に思ったときにはもう遅かった。私と葵は横になっていた。葵のベットで。しかも葵に抱きつかれたまんまだった。流石にこれは予想外だよぉ。なにこれ……同衾!?
葵は私が良いって言ったことを持ち出してくる。私はその言葉を思い出した。
『うん……私もこうしていたい。』
「いった、いったけどぉ。」
「異論は認めない。今日はこうして寝たいんだ。」
今その言葉を持ち出してくるとは思っていなかった。それに私に拒否権はないらしい。ああ言った手前断れないんだけどね。あ、でも、葵以外の人に言われたら嫌悪感しかなくて断るんだけどね。
「じゃあ、寝るか。お休み。」
「お、お休みっ。」
私がそんなことを考えていたら、葵は電気を消して寝る準備に入っていた。お休みと言われたのでお休みと返す。一緒に寝るっていうことで緊張して声が上擦ったかもしれない。
「うぅ~、こんな状態で寝れるわけないよぉ~」
私はついそうこぼしてしまう。あ、今の聞かれたかな?葵を確認しようとしても後ろから抱きつかれているから見れない。しばらく黙っていると葵の寝息が微かに聞こえてきた。
「……もう寝てる。私はこんなにドキドキしてるのに……」
私はすぐに寝てしまった葵を恨めしく思った。
____________________________________________
そして今に戻る。未だに寝れていない。あれから結構時間が経っているはず。そう思っていて時間を確認してみる。
「……うそっ。もう1時間も過ぎてる……」
既に日は跨いでいた。そろそろ本格的に寝ないとまずい。寝れなくても目を瞑っていよう。そうして私は寝ようとしていた。
結局眠れたのは結構時間が経ってからだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます