第10話 裏

 昼休み、私はいつも通り翠ちゃんとご飯を食べていた。葵は桔梗君とご飯を食べてる。


「……はぁ。」


「目の前でそんなにがっかりしないでよ。少し鬱陶しいわよ?」


 ため息をついた私は翠ちゃんから辛辣な言葉を貰った。目の前でされるといやなのは分かってるんだけどね。どうしてもつきたくなる。


「葵と一緒にご飯食べたかったなぁ……」


「自業自得じゃない?早いうちに言っとけば良いのに昼までに言ってないんだから。」


 確かにそうかも。昼に誘えばいいと後回しにした結果がこれ。もっと早く誘えば良かったと後悔した。


「でも……やっぱり一緒に食べたかったなぁ。」


 恋を自覚してから、葵にお弁当を渡すために家で練習したのだ。その他にも少しずつ積極的になっていっているつもり。……多少尻込みしてしまうこともあるけど。


「葵は美味しく食べてくれてるかな?」


「さぁね。後で聞いてみたら?」


 練習したし、今日作った物だって味見もした。けど、私の好みと葵の好みは違うわけで。葵が嫌いな味付けだったらどうしようと不安になる。


「うぅ、不安になってきた。」


「……私、席に戻って良いかしら」


 あまりにも暗い発言をしていたせいなのか、翠ちゃんがそんなことを言い出した。うん、人前で言うことでもないよね。


「ご、ごめんね。気を付けるからまだ戻らないで。一人になると寂しくなるから話し相手になってよぉ。」


「私、仮色君の変わり扱いなのね……」


 私の発言でげんなりとしている翠ちゃん。葵の変わりじゃないんだけどね。この寂しさは翠ちゃんでも消せないから。


「翠ちゃんは翠ちゃんで、葵は葵なの。どっちも変わりとかないの。ただ……寂しさを紛らすために話し相手になってくれないかなって……」


「なにそれ……」


 やっぱり嫌だったかな?翠ちゃんと話したいっていうのも事実なんだけど……。


「やっぱり……嫌?」


「うぐっ……なにこの可愛いさ……前よりも強力になってるんだけど……あ、いや全然大丈夫よ。」


「良かったぁ。ありがとう翠ちゃん。」


 やった!翠ちゃんとお話。この前の続きしたいかも。翠ちゃんと好きな人の進展を聞いてみたい。あ、でも私のことも聞かれちゃうかな。


「どういたしまして。それで?あんたここ最近やけに仮色君にベッタリじゃない。別人みたいよ?」


「そ、それは……」


 いきなり核心を突いてきた。どうしよう、翠ちゃん私の変化分かってたんだ。でも、なんだか正直に言っちゃうのも恥ずかしいし……ここは少しぼかして言えばいいかな。


「えーっと……実は好きな人ができちゃって……」


「ふーん……」


 翠ちゃんは考え込んでる。このままいけば誤魔化せるよね。この調子でぼかしていえば言ってみよう。


「その、葵には練習台になって貰ってるの。」


「ふーん……」


 翠ちゃんはかなり考えてる。このまま最後まで言っちゃおう。


「だから、最近ベッタリしてるのはそのれんしゅ……」


「嘘ね。」


「……はぇ?」


 翠ちゃんはきっぱり言い放った。あれ?完璧だったはずなのに……いつから分かってたのかな?


「はぇ?じゃないわよ。そんなバレバレの嘘突いても誰も信じないわよ。」


「バレバレ?うそぉ。」


 ほんとに?バレバレだったの!?うう、上手くできたと思ってたのに。


「というか、仮色君と離れて寂しいって言ってるあんたが仮色君以外で好きな人ができるわけないじゃない。」


「……」


 考えてみる。えーっと、私が葵以外の男の人を好きになっている光景。うん、無理かな。葵以外好きになりたくない。


「その様子だとその事実を今自覚したようね。」


「……うん。私、葵以外と付き合いたくない。」


 私、自分が想う以上に葵のことが好きみたい。葵に好きになってもらうようにもっと頑張らなくちゃ。


「それより、いつあなたが仮色君のことが好きって気付いたの?」


「それはねぇ、翠ちゃんの話も聞かせてくれるなら話そうかな。」


「分かったわ。お互いにさらけ出しましょうか。」


 私と翠ちゃんは昼休みを使ってお互い最近あったことを話し合った。


 私は、話をしている最中も葵のことをチラチラと見ていた。もちろん翠ちゃんに呆れた目で見られちゃった。

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