第10話 表
「ところでさ、葵。」
昼休み、俺はいつも通り石晶と昼飯、今日は玲奈が作ってくれた弁当を食べていた。なにこれめちゃくちゃうまいんだけど。
「……ごくっ。ああ、どうした。」
口に食べ物をいれながら喋るのは行儀が悪いから1度食べきってから喋る。どうしたのだろうか。
「最近、沢優さんとよく登校しているらしいね。」
いきなりぶっこんできた。なんだよ皆そんなに聞きたいのか?石晶が聞きたいと言うのが相当なんだが。
「そうだな。最近までは周囲の目を気にしてあまり一緒に来ない方がいいと思ってたんだが……」
ここで一旦言葉を切る。一緒に登校するようになったのは朝早くから玲奈が泣きながら来た日からだ。流石に全部を言うわけにもいかない。
「ある出来事があって、そこからまた一緒に登校するようになったんだ。」
「へぇー」
あえてぼかして答える。てか自分で話をふったくせに反応が薄いってどういうことなんだろうな。まあいい、今は弁当食うことの方が大事だ。
「見たところそのお弁当も沢優さんが作ったものだよね?」
「ングッ!……げほっげほっ。急になんてことを言いやがる。」
話が終わったと思って安心して飯を食ってたら爆弾落としてきやがった。てかなんでそんなのすぐに分かるんだよ。
「違うかもな。母さんが作ったってこともあり得るだろ?」
「君自分で、母さんは弁当作らないって僕に言ってたじゃないか。」
あれ?そうだっけか。………あー、確かに言ってたわぁ。てかそんなこと覚えてるとかあり得ないだろ。
「ああ、そうだ。これは玲奈が作ってくれた弁当だ。ありがたく食べさせて貰ってるよ。めちゃくちゃ美味いし。」
ばれてしまったら仕方がないので正直に開き直ってみる。石晶は開き直った俺に少し苦笑いだ。
「なら良かったじゃないか。これで昼代も要らないし、おいしいんだろ?」
「そうだな。正直昼代がなくなるのはすげぇ嬉しい。けど、ずっとっていうのも申し訳ないな。」
玲奈がこのままずっと俺に弁当を作ってくれるならありがたいけど、食費とかはどうなるんだろうか……
「そこは2人で話し合って作る曜日とか決めれば良いんじゃないかな。」
「あ、その手があったな。」
そうすれば良いのか……。まぁ、それなら俺もそんな考え込まなくても良いな。よし、帰ったら玲奈と決めてみるか。
「ありがとな。参考にしてみる。」
「まぁ良いんだけどね。それより……」
「君の意味不明な気持ちはもう分かったのかい?」
胸がドクンッて跳ねたように聞こえた。俺のなにか分からない気持ち。前は全然さっぱりだけど、今は少しだけ変わった気がする。
「おう、俺は玲奈のこと大切な人って思ってるのかもな。」
それ以上はまだあまり分からない。はっきりと石晶に伝える。でも石晶はなぜか少し驚いていた。
「へぇ。君しては大分早く分かったんじゃないか。いつもなら最後くらいになってから分かるのに。」
「お前は俺をなんだと……まぁいい。」
失礼だな。俺だってたまにはそういうことだってあるんだからそこまで驚かなくても良いじゃないか。
「でもまだしっくり来ないからもう少し考えてみるんだけどな。」
「それがいいかもね。ゆっくり考えてみるといいかもね。」
それから、俺と玲奈に関しての話はなくなり始め。俺と石晶はどうでもいい雑談をしながら昼休みが終わるのをまっていた。
俺は玲奈がこっちをみていることや、話がしたい目線を向けていることに気がついていなかった。
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