第9話 表

 ……最近、玲奈の様子が少しおかしい。これまではまるで同性の友達のように接したいた気がするんだが、今は違うのだ。


 手を繋ぐときなんかもモジモジしながら上目遣いで聞いてくるんだ。最近は繋ぎすぎだと思って今度こそ駄目と言うって決めているのにその姿をみるだけでその決意があっという間に崩れていく。


「ねぇ、葵。今日も手、繋いじゃ駄目かな?」


 ほら、まただ。流石に今日という日は断ろうと思う。月曜から金曜の今日までずっと手を繋ぐなんておかしいだろ。恋人でもないんだし。


「流石に今日はやめとくか。」


「え……う、うん。分かった。」


 ズシッと空気が重くなった気がした。いや、実際に玲奈を中心に重くなっている。そこまでがっかりすることか?すごく罪悪感が沸いてくるんだが。


「そ、葵。早く学校いこ?」


 玲奈はぼやっとした声でそう言ってくる。俺には全く分からないが玲奈にとって手を繋ぐことはとても大事なことらしい。


「そうだな。早く学校いかなきゃ遅刻するかもな。」


「うん……」


 ギュッ


 俺は不意打ち気味に玲奈の手を握り歩く。そうしなきゃと思ったんだ。玲奈の落ち込んだ顔もみたくないという風に。また、変な感情が生まれた。


「……ふぇ?そ、葵?」


 玲奈が繋いでいる手と俺の顔を見る。どうやら落ち込みすぎてあまり状況が分かっていないそうだ。俺は関係なく玲奈が歩きやすいペースで歩いていく。


 ギュッギュッ


「えっ!葵!?」


「あーもう。そんな大声でいちいち言わなくて良いから。さっさと行くぞ。」


 やっと気づいたようだ。大声で驚いたせいでこっちも驚いたよ。落ち込んだと思ったら今度は驚く。感情が豊かだな。


「うん!えへへ……」


 にぎにぎ、にぎにぎ


「……っ!」


 今度は急に笑顔になった。しかも手をにぎにぎしてくるし。恥ずかしいんだが。まあ、いつもの玲奈に戻ったから良いか。





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 学校前についた。やっぱり手は繋いだままだ。もはや周囲の視線にもなれてきた。月曜からずっと見られてたしな。


「玲奈、そろそろそのしまらない顔何とかしないか?」


「そんな顔なんてしてないよぉ~」


 いや、めちゃくちゃしてるぞ?かわいい顔が台無しで勿体ないんだが。自分が可愛いことを少しは自覚して欲しいものだ。


「そ、葵。そんなこと思ってくれてたんだ。嬉しい。えへ、えへへへへ……」


 どうやら口に出していたらしい。玲奈の顔は更に悪化した。俺のせいかな。しかし、これ以上顔を見せるのは危ない。


「おーい、玲奈さーん。」


「んふぅ、ん?どうしたのぉ。」


 くっ、可愛い。しかしここで挫けるわけにはいかない。俺は玲奈の尊厳を守るんだ。


「俺の背中に張り付いてくれませんかね?」


「分かったぁ……ん?……」


 何の疑問もなく張り付いてくる玲奈。頭がふわふわになっているからこそ出来ることだよな。後何か不思議に思ったようだが特に気にしていないらしい。


 すんすん、すんすん


「すぅ……はぁ……葵の匂いが充満してくる。良いにおーい。すんすん……」



 その後、俺はようやく教室に入ることができた。玲奈は靴を履きかえるとき以外俺の背中に引っ付いていた。ある意味すげぇ。


 俺達が教室に入って注目された後、男子からは叫ばれ女子からはキャーと叫ばれた。




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 2人が校内へ入った後の校門にて……


「なぁ、最近沢優先輩と仮色先輩の仲の良さって異常じゃないか?」


「きっと付き合ってて見境なくイチャついてんだろうよ。無意識にな。」


「うへぇ、それただのバカップルじゃんか。」


 という会話や……


「ねぇ、今の聞いた?『俺の背中に張り付け』だって!きっと沢優先輩のあんな顔他の男に見せたくないからじゃない!?」


「そうだよね!えぇー仮色先輩って独占欲結構強いんだね!ありかもぉ。」


「でもあんた、あの2人の間に入っていけるの?」


「いや無理でしょ?仮色先輩って一途っぽい気がするし。それに……」


「「あんなにラブラブだとねぇ。」」


 2人の女の子は合わせて呟いた。




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 あとがき


 ここから玲奈をどんどん可愛くしていくつもりです。葵君はいつ陥落するんでしょうか。


 私もこんな可愛い(自分でいう)幼馴染が欲しかったなぁ。現実って残酷ですね。



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