第6話 裏
早く放課後ならないかなぁ。私はそんなことを思いながら過ごしていた。いや、まだ朝なんですけどね。早く葵と手を繋ぎたい。
ソワソワ、ソワソワ……
「ねぇ玲奈、あんた何ソワソワしてんの?ちょっと気持ち悪いわよ?」
おっと。無自覚でソワソワしてたらしい。もうちょっと気を付けなきゃ。
「……気持ち悪いは酷くない?」
私は高校で出来た友達、
「え?でも結構不審な感じだったよ?」
「え……うそぉ。」
もしかしてみんな見てたかな?周囲の反応なんていつもは気にしないけど、自分が変な行動した時は気にしちゃう。
「それよりさぁ」
翠ちゃんが少し怒ったように話題を変えようとしてきた。なんだろう。なんで怒ってるのかな?
「ねえ、玲奈。なんであんた仮色君と一緒に来てるのよ!しかも手まで繋いじゃってさあ!」
やっぱり?気になっちゃうのかな。でも翠ちゃんだけじゃなくて他の人にも返す言葉は決まってる。
「えっと、やむにやまれぬ事情がありまして?」
私はそう誤魔化す。だって朝の出来事から今までを全部話すわけにいかないじゃん。恥ずかしいし。しかも他人が聞いてもつまんないだけだと思う。
「そんな理由で手繋げれるなんて羨ましいわぁ。」
翠ちゃんは何故か羨ましそうに文句を言う。むむ、もしや翠ちゃん……
「もしや翠ちゃん、葵に気があるとか……」
「は?いやいや!そんなわけないじゃん。玲奈がいるのに仮色君なんて狙うわけないじゃん。」
ほうほう、私がいるから狙わない、とな。つまりは……
私は更に閃いた。もしかして私、探偵目指せるんじゃない?
「つまり、私がいなければ狙っていた……と?」
ズバリこれでしょ!ふふん、これで翠ちゃんも正直になれるよね。
どやっ!
「どや顔してるとこ悪いけど、あんたの考え全部間違ってるから。」
「………え?うそぉ。」
そ、そんな。私の名推理が……このままじゃ迷推理になっちゃう。じゃあ羨ましそうにしてたのはなんでだろう?
「もしかして翠ちゃん、好きな人いるとか?」
考えて出てきたのはこれぐらいだった。私のへっぽこな頭脳じゃこんなことくらいしか考えられないもん。
「ま、まぁね。私も好きな人にして、もらいたかったから……」
言ってて恥ずかしくなってきたのか、段々と声が小さくなっていく。すごく可愛い。翠ちゃんも立派に女の子してる。
「翠ちゃん可愛い!相手が羨ましくなっちゃう。」
「な、何言ってんのよ!私が可愛いわけないじゃない。それにあいつはそんな目で私を見ないわよ。」
翠ちゃんは最後だけ少し寂しそうだった。むむっ、その相手はもっとちゃんと翠ちゃんを見てあげれば良いのに。
「そうなんだ。後、翠ちゃんと好きな人とのこれまで聞いても良い?」
私は単純に恋愛話が聞きたくなったので翠ちゃんにそう言ってみた。
「別に良いけど、余り面白くもないわよ。それに私が喋るならあんたも喋りなさいよね。」
「えーっと……ぜ、善処するね。」
なかなかに目敏い翠ちゃんだった。
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「ふーん。あんた、そんなことで手を繋いでたの?」
昼休み、私は翠ちゃんに事の顛末を洗いざらい吐かされていた。全部話した訳じゃないけどほとんど言っちゃった。
「そ、そんな事って。私にとっては大事だったの!」
確かに他の人からすればそんなことだけど、そのときの私は大変だったんだから。
「も、もうこの話しは良いでしょ!次、翠ちゃんの話を聞かせて。」
私はこれ以上聞かれたくないため強引に話を打ちきり、翠ちゃんの話を聞こうとする。
「はぁ、まあ良いわ。じゃあ話すわね。」
そう言って翠ちゃんは好きな人との出来事を話し始めた。
「えーっと、私とあいつが初めてあったのは……」
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「……ほぇー。そんなことがあったんだ。」
翠ちゃんの話は楽しかった。翠ちゃんの好きな相手は幼馴染らしい。幼馴染とは昔から今でも変わらず仲良くしており、一緒の時間を過ごしていたら段々好きになっていったそう。
いいなぁ、こういう恋愛してみたいなぁ。
「いや、出来るって言うかしてるじゃない。普通に私とあいつよりも恋人らしいわよ。」
「あれ?声に出してた?」
「思いっきりね。」
どうやら声に出していたらしい。けど、私が恋人らしいことをしてる?いったいどう言うことだろう?
「私、そんな恋人らしいことしてないよ?」
翠ちゃんにもちゃんと言っておく。すると、翠ちゃんは驚いたようで、
「嘘、嘘でしょ。だったらなんであんた…」
キーンコーンカーンコーン……
チャイムがなっちゃった。授業の準備しなきゃいけないからこれ以上は話せなさそう。
「ごめんね翠ちゃん。この話はまた今度しよーね。」
「いや、放課後絶対聞くから。あんた後言うまで帰らせないから。」
「ごめんね。放課後葵と帰ることになってるの。」
「……はぁ?なんなのあんたとそいつは。恋人じゃない?寧ろそこら辺の奴らより全然恋人ぽいのに。」
翠ちゃんは最後に何か言っていたようだけど授業の準備で忙しかった私には聞こえなかった。
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