第3話 表
「う~、私のバカバカ。なんであんなことしてたんだろう…」
玲奈と一緒に昼飯を食べたあとまた部屋に戻ったが、玲奈は布団に被り唸っている。
「いや、まぁ。可愛かったぞ?」
「そんなことどうでも良いの!人前であんなことさせた自分が恥ずかしいの!」
どうやら慰めは逆効果だったらしい。普通に可愛かったんだけどな。しかし、いつまでも布団を被っているとこっちが困るんだよなぁ。それ、俺の布団だしな。気付いているんだろうか。
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……数十分後
俺はやっと元に戻った玲奈とゲームをしていた。どうやらこれがやりたくて朝から俺を起こそうとしていたらしい。
遊んでいるゲームソフトは有名な「大乱○スマートシスターズ」だ。スマートな姉妹達とはなんだろう。無性に気になる。
「なあ、スマートな姉妹達ってどういうことだ?」
気になってゲームもしづらくなりそうなのでこのソフトを持ってきた玲奈に聞いてみる。
「え?そのまんまの意味だよ?あ、でもスマートにも色々意味があるからね。」
そのまんまの意味……ふむ、分からんな。
「分からないな。知っているか?」
「そりゃもちろん。スマートはね……」
玲奈から聞いたところスマートには様々な意味があるらしい。このゲームで使われているのは……
【活発な・きびきびした・すばやい・機敏・頭のよい・賢明な・気のきいた・抜けめのない・油断のない】
らしい。その中から姉妹の1人を選び相手を倒すというゲームらしい。なんだそれ。めちゃくちゃ面倒くさそうなゲームじゃん。
「お前、よくこんなゲームやろうと思ったな。」
「えー、長く遊べる方が葵といっぱい遊べるじゃん。」
俺といっぱい遊ぶため、ねぇ。こう、さらっと嬉しいことを言ってくれるのはどうしてだろうな。ここまで言われたらやるしかないじゃん。
「分かったよ。まぁ、内容はどうかと思うけど面白そうだしやってみようぜ。」
俺は活発な姉を選んだ。活発なら強いだろう。玲奈が選んだのは油断のない妹だ。なんか玲奈の方が強そうなんだが。
「うん!ぼこぼこにしてあげるね!」
……さらっとひどいこと言うなよ。
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「なんで、なんで勝てないのぉ~」
圧勝だった。いや、弱すぎるだろ!?いや、俺が使っているキャラが強いのか?気になったので調べてみる。
……玲奈が使っているキャラの方が強い。
「……玲奈ってそんなにゲーム下手だったっけ?昔は普通に上手かった記憶があるんだが。」
「こんなはずじゃなかったの。この
下手ということは認めないらしい。今度は別のキャラを使うらしい。今度はすばやい妹を使うようだ。
……そしてまたバトルが始まった。
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「やった!やったよ!やっと勝てたぁ~!」
もう日が沈み始めて辺りが暗くなり始める頃。
玲奈はやっと俺に勝てた。何回勝負したのだろう。100回以上はした気がする。
「おめでとう。やっと勝てたな。俺はもうくたくただ。」
さすがに疲れた。しばらくはやりたくない。
玲奈はとても嬉しそうにはしゃいでる。おかしいな。あいつも同じくらい遊んでいたはずなのに全然疲れてなさそう。なぜだ。
「葵ー。私が勝ったからご褒美ちょうだい。」
「はいは……は?」
え、じゃあ玲奈に何回も勝った俺にご褒美は?玲奈が貰えるなら俺だって貰えるはず。しかし、現実は非情で俺がそんなこと言っても相手にされないのは目に見えている。
まあ、別に1回くらいいいか。
「分かった分かった。それで?何をすれば良いのですか。お嬢様。」
「それはね~、私を後ろから抱きしめて欲しいなぁ~なんて…」
簡単なお願いかと思いきや思ったより、それ以上に難しいお願いをしてきた。なんだそのお願い。どう見ても俺に得しかないじゃん。いやしかし、やるとしても恥ずかしいな。
うんうんと考え込んでいる俺を見た玲奈は嫌がっていると思ったらしい。
「あ……ご、ごめんね。やっぱりダメだよね。無茶なお願いしてごめん。」
そんなことを言ってきた。はぁ、こんなことを言わせた自分に腹が立った。女の子を悲しませるなんてバカだろ。
「ああ、すまん。ダメっていうわけではないんだ。そりより、もっといいお願いとかないのか?」
「良いの?今のお願いが1番して欲しい。他にして欲しいこともないし。」
そこまでなのか。だったら俺は玲奈を満足させるまでお願いを聞くだけだ。
「分かった。後ろから抱きしめれば良いんだな?」
「う、うん。よろしくね?」
俺は玲奈の後ろに移動して腕をまわし、そっと抱きしめる。玲奈がビクッとしたが何も言わないのでこのまま続ける。やがて玲奈も落ち着いたのか俺に体重を預けてくる。
「んふふ、楽な姿勢でいいかも。葵はどんな感じ?」
「俺?玲奈は軽いほうだからそこまで辛くないし抱き心地が良いから大丈夫だよ。」
「ふぇ!?そ、そう……ならよかった。」
安心したのか更に体重を預けてくる。決して重いわけではなく、むしろ心地いい。このままずっと抱きしめていたい気分だ。
俺はこの状態をしばらく楽しんだ。
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