第33話 再会
「それで勉強は!?」
オープンと同時にショッピングモールへ駆け込み、遊びの限りを尽くす女子達に啞然としていたら昼を迎えていた。
まずはゲームセンターに行きプリクラを撮らされ、興味が湧かない雑貨屋で何時間も過ごし、フードコートでご飯を食べる。今日は勉強しに来た訳であって青春しに来た訳じゃないんだよ!? いや、ショッピングモールに勉強しに行くのもおかしいけど!?
「あ~。どうする?」
筆頭、苗村雫。そういえばこの先輩が率先して案内していた。これは作戦か?
「しよう! 由芽達、勉強しに来たんだよ?」
「そうね」
思い出したかのように教材を広げる二人。勉強を開始することは良いことだけど、これまで忘れていたのなら、僕は泣きたい。
「えー・・・・せめて可愛いカフェでぇ・・・・」
「駄目です。ほら、先輩もしましょうよ」
やれやれ。どうやらこの先輩は意地でも勉強したくないらしい。椅子の前に立っているから、椅子を前に押して無理矢理座らせる。
「あうっ」
椅子に尻餅をつく先輩が情けない声を出して、僕の方を見る。これまでとは比にならないくらいの必死さだ・・・・。
「ほら、広げてください。僕と一緒にやりましょう・・・・」
高2の範囲は分からないが、この先輩よりは理解力がある気がする。テキストをパラパラとめくり、どんな感じなのかを確かめる。
「あ、教えてくれるの!?」
後輩に向かってテスト勉強の講師を期待する先輩。ちょっと情けなく見えてきた。
「教えれるかはわかりませんが、一緒にしましょう」
「うん!!!!」
とびっきりの笑顔を僕に振りまく先輩。目の前からは2人の視線を感じる。
由芽はフグのように頬を膨らませ、姫花は期待の眼差しを向ける。由芽は置いておいて、姫花には悪いと思う。多分、今日はこの先輩につきっきりです・・・・。
何とか理解できるところを必死に先輩へと教えながら、2人の視線を受止める勉強時間。フードコートが混雑するランチのタイミングは既に過ぎており、周りを見渡すと空席が目立つ。
僕は予知出来なかった。
未来を知ることが出来なかった。
確かに起こった事象は不都合なものではなく、逆に嬉しいものだが、見ることに相当する出来事だった。
僕たちの席の後ろに誰かがいる気配がする。勘違いかと思って、無視していたら声が僕へと掛かった。
「お兄・・・・ちゃん?」
目の前にいる由芽は驚き、瞬きを繰り返す。
その声に僕は聞き覚えがあった。意識せずとも勝手に脳内検索が行われ、答えが弾きだされる。
導き出した「答え」は後ろにいる人物の発言と一切の矛盾点を持たなかった。
恐る恐る振り返る。
そこには彼女が居た。
僕の妹だ。
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