第25話 心情理解
「まぁ、釣り合わないもんね~」
「お前!! それは言い過ぎだろ!!!」
僕の隣人。足立が会話に入ってくる。この2人は仲が良いから、こういう言い合いはかなりの頻度で勃発する。勿論、僕の対応は完全無視。十八番の眠るふりでやり過ごす。
「ね、神崎。釣り合わないよね?」
「そんなことはないよな!? サッカー部は香乃が居なくなって男臭いんだ!! ほら、可愛いそうと思ったら紹介してくれよ!!!」
やり過ごせないらしい。
「うーん・・・・ん、サッカー部?」
サッカー部? そういえば、藤巻はサッカー部だったか。
「當間先輩って知ってる?」
勿論知っているだろうが、会話を変えるために質問する。
「逆に知らないとでも? どうした? 神崎もサッカー部に入りたいのか?」
いや、全く入りたくない。
「どんな先輩?」
藤巻の感想を聞いてみる。
「あー・・・・。イケメン、天才、血筋最高」
「あと、得体の知れない感があるな」
なるほど。否定は出来ない。僕が彼と対峙した時に感じたものもそれだったのかもしれない。
「そう? ただのイケメンに見えるけど」
足立が物申す。
「いやぁ・・・・ま、良い先輩だよ」
「そうか。ありがとう」
「何で尋ねたんだ?」
僕が今度は質問される。
「少し気になったから・・・・かな」
それしか理由はない。
「・・・・そうか」
チャイムが鳴り、ホームルームが始まる。
「どうでも良いけど、先輩と問題起こすのは止めた方がいいぞ」
こそっと耳打ちされる。もう既に遅いんだよなぁ。
藤巻は気付いているのかもしれない。香乃が僕と一緒の部活に入ったことはクラス内だったら知っていてもおかしくはない。そして、藤巻はサッカー部だ。當間光輝が香乃由芽に何かしらの感情を抱いていたことも知っていたら・・・・。僕の発言を聞いて、気付くのも容易か。
まだ体の節々は痛み、昨日のことも鮮明に思い出すことが出来る。
當間光輝は一体どういう感情を持って僕を殴ったのか。考える。
まず、僕を恋敵と思っているパターン。だが、これは違う気がしてならない。純粋な恋を香乃に対して抱いていたのなら、未来を見たとき、香乃が襲われている意味が分からない。好き故の事と言われれば説明がつかないことはないが、僕には違うと見えた。
・・・・分からないなぁ。僕は僕の心情すら理解していないのに、他人の心情を理解しようとするなんてまだ早かったか。
だが、一つだけは僕が確信していることがある。
當間光輝は人と違う。
だから、普通の人と同じように考えるのはやめよう。
當間光輝はイレギュラーだ。
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