第24話 朝の来訪者
「一緒に学校行くのは久しぶりだねー!」
「うん。そうだね」
僕の家は学校と香乃の家の間にある。そして、僕の方が登校時間が早い。だから、香乃と一緒に学校へ行くなんて本当に小学生以来かもしれない。・・・・これまで、香乃を避けてたってこともあるけど。
いつまで、僕はこんな中途半端な生活を送るのだろう。香乃とは付き合わないが、近くにいる。部活も結局行くことになってしまった。何もかも中途半端過ぎる。
ため息をつきながら、目の前をスキップしそうな足取りで鼻歌を歌っている香乃を見る。こいつ、学校が楽しくて仕方ないんだな。僕もそんな気持ちを持っていた時代に戻りたい。
学校に着くと、いつもとは違う光景が教室で待っていた。僕は早めに登校しているから、いつもクラスには数人しかいない。だが、この時間になってしまうと結構席が埋まっている。そして、僕の席も埋まっている。
「・・・・本居さん?」
「名前」
「・・・・姫花?」
「何?」
「いや、何って聞きたいのは僕なんだけどね」
これまで見たこともないような生徒が、クラスに平然と座っていると観察したくなるのだろう。クラスメイトが僕の方を向いている。
視線を浴びて落ち着かなくなる。これ、どんな風に見られているのかな・・・・。あぁ、他人の目線を気にしているあたり、僕はいわゆる陰キャというものなのだろう。改めて自覚した。
「勉強、教えてくれるって言ったよね」
「うん。言ったけどもう授業始めるよ?」
「ずっと待ってたのに来なかったね」
プイッと目線を外されれる。あれ、これは僕が悪いのか?
「ごめんね。分かった、放課後行くから」
「うん」
「あれ!? 姫ちゃん?」
香乃も気付いてらしい。手を姫花の方に向かって振る。
姫花は小さく手を振り返し、スタスタと逃げるように教室を出る。分かるよ、その気持ち。香乃には悪意がないとは思うが、そんな風にされると注目をより浴びてしまうから逃げたくなるよな。
「なぁ、知り合いか?」
後ろの席から声を掛けられる。藤巻圭吾。たまに話しかけてくれる奴だ。あと、ペアの時はいつも組んでくれる。僕としては非常にありがたい存在だ。
「うん。知り合いだね」
事実、知り合いだから肯定する。
「・・・・可愛いな。紹介してくれよ」
真顔でそんなことを言う藤巻。よく真顔で言えるな・・・・。
「ま、機会があったらな」
軽く流しとく。
「それ、絶対紹介してくれないパターンだろ!」
バレてました。
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