【ハイファンタジー】チートもご都合主義もない異世界転移。

 キキイーッ、とブレーキの音。

「危ないっ!」

 誰かの声。

「え?」

 俺がスマホから顔を上げると、トラックが目の前に迫っていた。

 は、トラック? 嘘だろ? そ、そんな……

 ドンッ!

 体に衝撃が走る。くるくると俺は宙を舞った。

 そして、俺は死んだ。




「起きろ。起きやがれっ!」

 ばこっ、と頭をぶん殴られる。

 目を開けると、そこは白で構築された神聖な世界だった。で、俺の目の前には、見たことがないくらい綺麗な女。

「誰?」

「私は女神」

「女神」

「えー、あなたは死にました」

「じゃあ、ここは死後の世界?」

「そうそう。実はあなたは死ぬはずじゃなかったんだけど、手違いがあって殺しちゃったのよね」

「はあーっ!? ふざけんな! 責任とれよ!」

「責任取れ? てめえみてえな人間がうっかり死のうが、私の知ったことじゃないわ。でも、まあ、このままここに居座られても嫌だから、違う世界に送ってあげる。感謝なさいっ!」

「異世界転移? やったぜ」

「じゃ、今から送るから」

「まてまて。チート能力は?」

「は? なにそれ? そんなのあげるわけないじゃん。自分で頑張れよ」

「ふざ――」

 ヒュン。

 転移魔法によって、俺は異世界へと送られた。




 気が付いたとき、そこは中世ヨーロッパ風の街中だった。

 おお~。俺は本当に異世界にいるんだなっ!

「よっしゃ、来たぜ異世界」

「いbへwじゅお;gべほじぇぐぇzgbほ?」

「え?」

 街の人に話しかけられたものの、何を言っているのかわからない。

「言語も通じないのかよ。どうしたものかね……」

 とりあえず、街を散策してみた。

 いつの間にか、スラム街のような場所に来ていた。

 引き返そう。そう思ったところで、やばそうな男三人組に話しかけられた。

「あういぎおrhのえgへろhんごえsxrhg?」

「sじゅへbhじゅいgろhn!」

「あいjふぉgrhのgr!!!」

 まずい。

 何を言っているのかわからないけど、不穏な雰囲気だ。

「た、助け――」

 ぐさり、と。

 男にナイフで腹を裂かれた。

「ぐああああああっ」

 ぐさっ。

 ぐさっ。

「へtふぉうgrんhwにbsる!」

「ううぇbgtLurwgju」

「ろjzr;bぐおbhろ」

 チートもなければ、ご都合主義もない。

 そんな俺が異世界に行って、生活できるはずがない。

 おかしいな。ネット小説なら、チート能力でこんな奴らワンパンできるのに。そして、かわいい女の子たちとハーレム生活ができるっていうのに……。

 現実は甘くないな。

 今度は、チート能力がほしいものだ……。


 そう思いながら、俺は意識を失っていった。


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