第5話 絶望と微かな希望

「誠」

 終わった。

 何もかも。

 桜子から逃げる術を探さなきゃ。

 見つかるのも時間の問題だ。

 あ、そうだ。

 桜子が来るのを待とう。

「桜子」

 誠。いるなら出て来てよ。

「誠」

 桜子。頼むから、俺を解放してくれ。

 こんな事する桜子なんか好きになれる筈がない。

 悪いけど……このまま桜子が変わらないなら、自らこの部屋で死ぬ。

「桜子」

 え……誠

 何言ってるの?

 私はあなたに振り向いてほしくてやった事なのよ?

 私が変だと言いたいの?

 え……?

「誠」

 君は狂ってる。

 ここから、出さないと言うなら無理矢理にでも出て行く。

 桜子は唖然としている。

 今がチャンスだ。

 僕は部屋から慌てて出た。

 桜子は追ってきて無い。

 よし。

 このまま逃げられる……

 うっ……

 体に痛みが走った。

 よく見ると、僕の背中に果物ナイフが刺さっていた。

 僕は痛みを堪えながら、桜子から逃げ切った。

 だが、桜子から逃げる事など出来はしない。

 必ず僕を捕まえに来るのを知っている。

 僕は道端に倒れてしまった。

 *目が覚める*

 目が覚めると、僕は病院に居た。

 誰かが助けてくれた。

 しばらくすると、守宮署の刑事が来た。

 失礼する

 守宮署の福田賢治だ。宜しく。

 君が宮坂誠さんですね。

 実は、あなたに聞きたい事があり今日来ました。

 あなたは、3日程前にストーカーに追われていると電話をしてましたよね。覚えてますか?

「誠」

 はい。確かに覚えてます。

 あの時、別れた彼女が追いかけてきて

 西町3丁目公園のトイレから電話をしたのを覚えてます。

「福田」

 そうでしたか。

 その時、うちの署の者が3人殺害されたのも覚えてますか?

「誠」

 はい。

 覚えてます。

 あの時の事を忘れられません。

 私の目の前で殺したのを見ました。

「福田」

そうでしたか。

あなたは、この方を知っていますか?

そう言うと福田は複数の犯人と思われる写真を見せた。その中に桜子の写真もあった。

「福田」

この中に、あなたをつけ回していた人はいますか?

そして、警官を殺害した人はいますか?

「誠」

すいません……。

今は答えたくないです。

少し時間をください。

僕は桜子の事を刑事である福田に言えなかった。

「福田」

そうでしたか。

わかりました。日を改めて来ます。

そう言うと福田は病室をあとにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る