リゲル辺境編
第179話 新たな出会い
俺たちはセクション2のトラペジウム宙域で謎の円盤UFOと対峙していた。謎の円盤UFOといっても、宇宙人が乗っているわけではない。いや、ある意味宇宙人かもしれないが、ようは前世でアダムスキー型といわれた宇宙船が、ゲートを抜けてきた俺たちの目の前にいたのである。
困ったことになった。このタイミングでは俺たちがゲートを抜けてきたのは一目瞭然である。普通でも新たなゲートの発見は一攫千金の大発見である。それが、セクション2はゲート2の消失で孤立状態にある。そこに新たなゲートの発見の知らせが有ればそれこそ大騒ぎになること間違いなし。トラブルに巻き込まれること必至である。
「キャプテン、向こうの船から通信の要請がきている」
うーむ。このまま黙って逃げるのもありかもしれないが、この距離からじゃ船を特定されているだろうな。指名手配されれば逃げても無駄か。
「チハル、通信回線を開いてくれ」
「了解、通信回線を開く」
通信が繋がると前面のモニターに野暮ったい服装のおっさんが映し出された。
「よう。俺はキャプテンヤット。冒険者だ」
「どうも。キャプテンセイヤ、個人事業主です」
「個人事業主?」
「資源採掘やお客の運搬、傭兵まがいのことまで色々やってます」
「そうかそうか、海賊じゃなくて助かったぜ」
「そういうヤットこそ海賊じゃないでしょうね。冒険者って何をやってるんです」
「俺が海賊だって? この船見れば海賊なんて無理だとすぐにわかるだろう」
俺には見ただけじゃわからないのだが、チハルは納得している様子なのでそうなのだろう。
「今はな、ゲートの探索をしていたところなんだが」
よりにもよって。
「ええ、俺たちは資源採掘していたら未知のゲートに飲み込まれてここに出てきたようです」
「そうなのか! やっぱりゲートがあったんだな」
気のせいだととぼけた方がよかっただろうか。
「それでそのゲートはどこに繋がっている」
「セクション4ですが」
「セクション4なのか。ゲート4は生きているのか」
「はい、大丈夫です」
「そうか、よかった。これで遠回りとはいえエリアEまでの航路が確保できるな。この情報を持っていけば大儲けだ」
「あの、残念ですけど、ゲートはもう閉じちゃったみたいですよ」
「なんだって!」
ヤットは大急ぎで何か計器を操作している。ゲートを探知しようとしているのだろう。
「本当だ。反応がまるでない」
これで諦めてくれればいいのだが。
「何か発生の条件があるのか? それとも時間を置いて定期的に開くとか……」
まあ、そう簡単には諦めてはくれないか。
「ゲートがまた開かないとセイヤは戻れなくなって大変だな」
「そうですね。とりあえずシリウスに知り合いがいるかもしれないので訪ねてみます」
「シリウスか、残念だがシリウスは鎖国をしていて入れないぞ」
「え! 入れないんですか」
リリスがいるかもしれないのにそれは困る。
「そうだよな。200年以上情報のやり取りがないんだから、セイヤはこっちの情勢を全く知らないのが当然か」
確かにそのとおりだ。もっともつい先日までこっち以外の情勢も知らなかったが。
「よかったら俺がこっちの情勢を教えてやるよ。代わりに向こうの情勢を教えてくれ」
「俺はありがたいですが、行けもしない向こうの情勢を聞いてヤットには何もメリットがないのじゃないですか」
「そんなことはないさ。行けなくても向こうのことは気になっているし、もし行けるようになった時のために情報を欲しがる奴はいるものさ」
「それでしたらお願いしますが」
「よし。なら俺が拠点にしているドックに行こう。この宇宙嵐の中じゃ落ち落ち長話もできない」
シリウスに鎖国で行けないというなら、ここに留まっていても仕方がない。確かに宇宙嵐が酷いし、早急に場所を変えて方がいいだろう。
「わかりました。そちらの後についていけばいいですかね」
「おう。じゃあついてこい」
「チハル、後についていってくれ」
「了解、発信する」
俺たちはヤットについていき、トラペジウムお抜けてリゲル星系にあるドックに到着したのだった。
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