PV100万記念おまけ 第2話

 父上から宝物庫の片付けを命令されたのに、宝物庫にあった謎の球体を転がして遊んでいたら、様子を見に来た父上に怒られてしまった。


「セイヤ様、すみません。私も転がしてみたい、と駄々を捏ねたせいで、国王陛下に怒られてしまって」

「リリスのせいではないだろ。元々、あれを転がし始めたのは俺なんだから」


「それでも、私がお止めすればよかったのです」

「俺は、リリスと一緒に転がせて嬉しかったよ」


「セイヤ様……」

「リリス……」

「ゴホン、ゴホン」


 リリスの侍女のアリアが、刺すような視線でこちらを見ている。

 それは明らかに「ゴミ虫。リリス様とイチャついてないで、ゴミ虫ならゴミ虫らしく、さっさとゴミを片付けろ。リリス様を働かせてるんじゃねえ。なんなら、お前もゴミと一緒に片付けるぞ」と言っていた。


「リリス、これは俺が父上に命じられた仕事だ。後は俺がやるから、リリスは休んでいてくれ」


 アリアの視線に恐れをなして俺はリリスにそう言った。


「セイヤ様、私たちは夫婦になるにですから、助け合うのは当たり前ですよ」


 リリスは、少し恥ずかしそうにそう返してきた。

 歯に噛む様子が本当に可愛らしいな。これで、痩せていれば申し分ないのだが……。

 逆にそうなると、俺など相手にされないだろう。

 どうにも、痛し痒しだ。


「あら、この黒い板は何かしら?」


 リリスが、宝箱の中から、謎の板を見つけて取り出した。

 それは、触る者に知識を与え、新たな進化をもたらす、各辺の比が1:4:9の黒い石柱の様にも見えた。


「俺にも見せてくれるか」

「はい、どうぞ」


 俺はリリスからそれを受け取ると、上下左右、こねくり回した。


「魔道具みたいだが、魔力が切れているのか? なら、魔力を込めれば動き出すか……」

「セイヤ様、駄目です!」


 リリスは慌てて、俺からそれを奪い返した。


「セイヤ様が魔力を込めたら壊れてしまいます」

「ああ、そうだな。すまない」


 俺は、魔力が多すぎて、うまく魔力を制御できない。

 そのため、魔法も使えないし、魔道具に魔力を込めれば、魔道具が魔力過多で壊れてしまう。


「リリスが代わりに魔力を込めてくれるか?」

「わかりました」


 リリスは、俺から奪い返した謎の黒い石板を持ち直して手を添える。


「それでは、魔力を込めますね」

「ああ、慎重にな」


「はい」


 リリスは少しずつ、それに魔力を込めていく。


「リリス、どうだ」

「魔力は流れていく感じがしますから、魔道具であることは間違いないです」


「そうか。で、動きそうか?」

「もう少し魔力の量を増やしてみます」


 リリスが魔力の量を増やしていくが、変化はない。


「セイヤ様は、これが何だと思われます?」

「そうだな……」


 もしこれが、例のあれだとすると……。


「他の星に繋がる転移装置かもしれないな」

「他の星ですか。夢がありますね」


 その時、謎の黒い石板が光りだした。


「キャッ!」


 リリスは驚いてそれを手放してしまう。


 ガチャン!


 床に落ちたそれは、大きな音を立てる。

 焦ったリリスがそれを拾おうとして……。


 見事に転んで、それを下敷きにしてしまった。


 バキッ!


 リリスの下から、鈍い音が聞こえた。

 これは、リリスの体重を考えたら、下敷きになった物は壊れただろう。


「リリス様、大丈夫ですか?」

「リリス、立てるかい? 捕まって」


 俺とアリアが二人で手を貸し、リリスを立たせる。


「セイヤ様、すみません。壊れてしまったかもしれません……」


 うん。見事に真ん中から四方にヒビが入っているな。これは駄目だな。


「気にするな。宝物庫といっても、見てのとおりガラクタばかりだからな。ガラクタが一つ片付いてよかっただろう」

「ですが……」


「それに、もし、あれでリリスだけが転移していたら、大変なことになっていた。俺には宝物庫の宝より、リリスの方が大事だ」

「セイヤ様……」


 俺とリリスが見つめ合う。


「ゴホン、ゴホン。それではこのガラクタは、ゴミとして捨てておきますね」


 アリアが、せっかくの甘いムードを吹き飛ばす。

 何で邪魔するかな!

 俺がアリアを睨むと、アリアはこちらを冷たい目で見ていた。


 あれは「お嬢様に手を出したら、ガラクタのお前もスクラップにして、ゴミとして捨てるぞ」といった顔だ。


 俺はその視線に耐えられず、すごすごと、片付けの続きをするのだった。


 しかし、あれはいったい、何の魔道具だったのだろう……?


 それが、宇宙船をリモートコントロールするためのタブレットであったことを、俺は知ることはなかった。


 俺は、宇宙船を手に入れる、二度目のチャンスを不意にしたのだった。


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