PV100万記念おまけ 第3話 ステファ視点
帝国へ嫁入りするのが嫌で、強制的に帝国に連れていかれそうになったところを、なんとか逃げ出し、そのまま家出生活を送っている私は、宇宙船への密航を繰り返し、今は、セクション4にある、第2857ドックにきていた。
ここで、次はどうすべきか情報を集めていたら、帝国の男爵令嬢が、宇宙船のライセンス講習を受けるという情報を掴んだ。
うまく取り入れば、帝国の情報が手に入るかもしれないと考えた私は、自分もライセンス講習を受けることにした。
ライセンス講習当日、私は早めに講義室にいき、一番後ろの入り口そばの席で、男爵令嬢が来るのを待っていた。
席も粗方埋まり、もうすぐ開始の時間というところで、執事風の男を連れた女の子が入ってきた。
彼女が件の男爵令嬢で間違いないだろう。
彼女は、一番後ろの席の窓際に座る男の子の隣に腰を下ろした。
「俺はカイト、講習が終わるまでよろしくな」
「気安く話しかけないでくださいな!」
男の子が彼女に挨拶をすると、彼女は迷惑そうにしていた。
「あ、それは、すまなかった」
「目障りですから、他の席にいってくださいな」
「え? 俺の方が? 君が他の席に移ればいいじゃないか」
「話しかけないでくださいな。さっさと、あっちに行って!」
言われた男の子は仕方なく、私の隣に移動して来た。
でも、それじゃあ、彼女の左から右に移動しただけだ。
通路を挟んだから少しは遠くなったが、ほとんど意味がないだろう。
とはいえ、もう既に、他の席は埋まっていた。
「災難だったわね」
私は隣の席に座った、男の子に話しかける。
「何なんだ、あれは?」
男の子はこちらを向き、声を潜めながら、親指を立てて後ろを指す。
「なんなんだろうねー」
私は、帝国の男爵令嬢だとは知っているが、知らないふりをする。
「あ、私ステファ。よろしくね」
「俺はカイト。こちらこそよろしく頼む」
私はカイトと知り合いになったが、男爵令嬢の方は暫く様子を見ることにした。
なんだかんだで講習は進み、四日目は、シャトルポッドの実機での実習であった。
昨日は一日シミュレーション訓練を受けたが、実機をちゃんと操作できるか、少し心配だ。
「おはよう、ステファ」
「おはよう、カイト」
挨拶を済ませると、カイトが周りをキョロキョロ確認している。
「どうしたの?」
「今日の実技は、三人組だろ。変なのと組まされないか心配でな」
「警戒してるんだ。でも、例の彼女ならいないわよ」
「いない? どういうことだ」
「彼女は、昨日のシミュレーション訓練で、思うようにいかずに、癇癪を起こして、シミュレーターを壊しちゃったんだって」
「壊した? 蹴りつけでもしたのか」
「多分、そんなところじゃない。それで、謝ればいいところを、逆に機械が悪いと、職員に罵声を浴びせて、出禁になったそうよ」
「じゃあ、もう、この講習には来ないんだな」
「そうだと思うわよ」
お陰で、帝国の情報は、何一つ取れなかった。
まあ、あの様子では、役に立つ情報なんて持っていなかっただろうが。
その後、私は無事に宇宙船のライセンスを取得した。
当初の目的とは違ったが、これは、これでよかった。
「ステファはこの後どうするんだ?」
「そういうカイトはどうするの?」
「俺は、船を買って、船長になるんだ」
「なら、私もその話に乗せてよ」
「え? いいのか?」
「共同で船を買おうと、言っているだけよ」
「おう、そうか。よろしく頼む」
「こちらこそ、よろしくね」
実は、この付近にドラゴンが棲む、ロストプラネットがある、という噂を私は仕入れていた。
大空を飛ぶ、ドラゴン。絶対に見つけなければ。
そのためには、自分の船を用意するのが一番だ。
そのために、カイトとの共同購入を提案したのだ。
さあ、すぐに宇宙船を買って、ドラゴン探しに行くわよ。
あれから数か月、私たちの目の前に、噂のロストプラネットが見えてきた。
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