第162話 その頃ステファは、プレアデス
連邦は、元々が小国の集まりだ。
アルデバランを中心に、小国を取り込みつつ、領域を拡大していき、現在は、エリアEとセクション2の半分を領域としている。
プレアデスは、その連邦を構成する星域の一つで、ゲート4から見るとアルデバランの手前側となる。
航宙管理局から何とか得られた情報によると、カイトを乗せた船は、ゲートを抜け、アルデバラン方面に向かったようだ。
カイトの母親のメロペーさんが言った通り、プレアデスに向かった可能性が強くなった。
私は、メロペーさんの指示で、宇宙船を、プレアデスを構成する星の一つ、ターユゲテーの衛星軌道に乗せた。ここから、シャトルポッドで地上に降下する。
行くのは、私と、メロペーさんと、ヨーコちゃんだ。聖女ララサさんと、アリアさんには船で留守番してもらうことにした。
着陸先は、王宮の中庭だ。
これで、メロペーさんが本当に元王女でなかったら、捕まってしまうところだ。
シャトルポッドから出ると、衛兵が待ち構えていた。
「メロペー様ですか?」
「父上はどこにいますか?」
「王太子殿下なら執務中ですが……」
「でしたら、執務室ですね」
メロペーさんは王宮の入り口に向けて歩き出す。
「お待ちください! 王太子殿下にお会いするなら許可をいただかないと」
「娘が父親に会うのに、許可などいらないでしょう!」
衛兵が止めるのも構わず、メロペーさんズンズン王宮内に入っていく。
私とヨーコちゃんは仕方なく後に続いた。
メロペーさんは王宮内をズンズン進み、重厚な扉の前で足を止めた。あそこが、王太子の執務室なのだろう。
彼女は、たどり着いた扉をノックすると、返事も聞かずにその扉を開いた。
「メロペーか? 久しいな。急にどうした?」
「父上! カイトをどこにやったの!!」
「カイトとはお前の息子のことか?」
「とぼけないでよ。どうせ、父上が言って、連れてこさせたんでしょ」
「何のことだ? わしには全くわからないのだが?」
「とぼけないで、って言ってるでしょ‼︎」
「メロペー、少し落ち着いて、お父様が困っているわ」
「マイア姉さん……」
部屋にいた女性が割って入って、メロペーさんを止めた。マイアということなら、この国の第一王女だろう。
「あの、ステファといいますが、メロペーさんの代わりに状況を説明してもよろしいでしょうか?」
私は、断りを入れた後に、カイトが行方不明になったことを伝えた。
「ということは、カイトはその執事風の男とメイド風の女に攫われたということか?」
「攫われたというか、自分でついていった感じらしいのですが……」
「でも、騙されている可能性もあるのでしょう。なら、誘拐よね?」
「本当に、父上も姉さんも知らないのですか?」
「わしは知らんぞ」
「私ではないわ。妹たちの可能性も……ないでしょうね……」
「じゃあ、カイトはどこに?」
メロペーさんの予想に反し、カイトはプレアデスに連れてこられたのではなかったようだ。
彼女が、ショックで倒れそうになったところを、私とヨーコちゃんで支える。
「すぐにカイトの捜査に当たらせよう。マイア!」
「わかりましたわ」
マイア王女が慌てて執務室を出て行った。
プレアデス王家でカイトの捜索にあたってくれるようだ。
私たちは、勧められたソファーに腰を下ろす。
そこに伝令がやってきた。
「王太子殿下、申し訳ございませんが、ホットラインが入っています」
「この慌ただしい時に、どうせ、ヒアデスからだろ!」
「その通りにございます」
「何度、こちらにそんな兵器は無い、と言えば気が済むのだ!」
カイトとは別件で連絡が入ったようだ。
だが、このタイミング、本当に別件だろうか?
ヒアデスといえば、ここからアルデバラン方面だ。
カイトを乗せた船は、アルデバラン方面に向かっていた。
「王太子殿下、カイトを乗せた船はアルデバラン方面を目指していました。プレアデスを通過してそのまま、ヒアデスに向かったのでは?」
「ヒアデスにか? 人質のつもりか?」
ヒアデスとは何やら揉めているようだし、その可能性はゼロとはいえないだろう。
「ホットラインを繋げ! わしが直接問いただしてやる!」
人質と聞いて、メロペーさんの顔が、余計に青ざめていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます