第147話 流刑星

 流刑星フォーマルハウトのドラゴン達を助けるため、竜姫と帝都を守っていたM4要塞を乗っ取った。

 その後は、帝国軍の追撃を緊急航行のワープ8で振り切り、ゲートを抜けて、セクション7に到着した。


 ここまで来ればフォーマルハウトまでもうすぐだ。

 ただ、それは距離的に近いという話で、ここからは出せてもワープ4までだ。時間的には、これまで以上にかかることになる。


「当然帝国軍は追って来るだろうな」

「それは五分五分」


 チハルから意外な答えが返ってきた。


「追ってこない可能性もあるのか?」

「M4要塞は帝都アンタレスの守りの要、それがなくなったら、帝都の守りが薄くなる」

「つまり、軍は帝都の守りが手一杯で、こちらは追って来ないということか」


「可能性の一つ」

「確かに、帝国は王国と戦争中です。ですので、帝都の守りを薄くしたくないでしょうが、皇国に出していた兵力が戻っています。帝都の守りはそれで十分と考えるかもしれません」


 シリウス皇国とは休戦になっている。将軍が率いる部隊は帝都に戻っているようだ。

 しかし、竜姫の話が本当なら、帝国は王国と戦争中であるようだ。今更だが、とばっちりを受けないように気をつけないといけないな。


「そうなると、ゲートを抜けて追って来る可能性も捨て切れないな」

「ゲートの向こうで、戻って来るのを待ち構えている可能性もある」


 確かにそうだ。ゲートを抜けられなければ、流刑星に閉じ込められているのとなんら変わらない。

 セクション7は未開発でなにもないのだから。


「うーん。でも追って来られる可能性もあるから、ゲートの出口である、ここで迎撃した方がいいだろうな」

「それは、その方がいい。ゲートは艦隊では抜けられない。一隻ずつ出てくれば、ハルクで確実に叩ける」


「では、ハルクをここに残していくのですか。無人で大丈夫でしょうか?」

「リンクもしてるし、デルタに任せれば問題ない」

「そうは言っても心配です!」

 竜姫はハルクを残していくのに反対のようだ。


「なら、俺様がここに残ろう」

「ブルドラ、いいのか?」

「暴れ足りなかったからちょうどいい」


「ブルドラが残るなら、ハルクの魔力切れの心配もないか。よろしく頼むな」

「任せておけ、捻り潰してくれる」

「撃沈させずに、押し戻してくれればいいからな」

「そっちの方が面倒くさいぞ」


 結局、ゲートの出口にハルクとのブルドラを残して、俺たちはM4要塞でフォーマルハウトを目指した。


 フォーマルハウトに到着したのは、それから二日後だった。

 衛星軌道から見るフォーマルハウトは、緑一色。森に囲まれた星だった。

 建物らしい物が見当たらないが、どこに住んでいるのだろう?


 ハルクとブルドラのことも心配なので、ちゃっちゃとドラゴン達を乗せて戻りたいところであるが、それには、まずは帝王を探さなければいけない。


「竜姫様、帝王陛下がどこにいるかわかりますか?」

「いえ、残念ながらわかりません」


「強い魔力反応が集まって来ている場所がある」

「こちらに気付いてドラゴンが集まって来ているのかな。まずはそこに行ってみよう」


 俺とチハルと竜姫はシャトルポッドに乗って、魔力が集まるところに降下した。

 そう、強い魔力が感じられる所にである。


「キャー、キャー、キャー」

 シャトルポッドの中で、竜姫が叫び回る。


「変態の集団です。あんな所に降りないでください!」


 衛星軌道から見つかるほどの強力な魔力の集団ということは、当然、ドラゴンは、人型でなく、ドラゴンの姿でいるわけで、そうなるとそれは、竜姫にとっては全裸の集団だ。


 叫び続ける竜姫は置いていきたいところであるが、ドラゴンに話を通すには竜姫がいた方がいい。困ったもんである。


 とりあえず、竜姫には目を閉じていてもらうことにして、シャトルポッドの中から外部スピーカーで話しかける。


「すみません。セレスト皇国のセイヤといいますが、帝王陛下とお会いしたいのですが、いらっしゃいませんか?」


 俺が話しかけたことにより、地上にいたドラゴン達がざわめきだす。


 そのうち数頭が飛び立ち、シャトルポッドの周りを取り囲む。すぐには攻撃をしかけて来ないところをみると、話し合いの余地はあるようだ。


「すみません。代表者の方はどなたですか。お話がしたいのですが」


『俺が話そう。セキドラだ』

 赤い立派な竜が返事をしてきた。


「竜姫様、セキドラさんだそうですが、知ってますか?」

「多分、騎士団長だった方かと」

 それなら帝王の居場所も知っているだろう。


「セキドラさん。実は竜姫様に依頼をされて、皆さんをこの星から助け出しに来ました」

『竜姫様だと。皇国の者がなぜ?』


「いろいろと事情があって、依頼を受けただけです。竜姫様も一緒に乗っているのですが、帝王陛下に会わせていただけませんか。できるだけ早くしたいので」

『竜姫様が一緒だと! 帝国を抜け出してこられたのか。それが本当なら、こんな星にいる必要はない』


「そうですよ。皆さんが乗れるようにM4要塞も持ってきました」

『M4要塞を持ってきただと?! その話、どこまで本当なんだ。そんなことをすれば帝国が黙ってないだろう』


「全て本当ですよ。ですから、急いでいるのですが」

『竜姫様が一緒だと言うなら、竜姫様に会わせろ。そうでなければ信じられない』


「姿を見せるのは構いませんが、皆さんの裸は見たくないそうです」

『裸とはなんだ! ドラゴンはみんなこの姿だぞ』


「竜姫様は、はずかしいそうですよ。人型になってもらわないと会えないと言っています」

『人型になったところを捕まえようという罠ではないのか?』


「違います! 本当に裸を見るのが恥ずかしいだけです。ですから、早く人型になってください!」

 竜姫が俺に代わって大声を上げた。


『おお、これは竜姫様の声。わかった、信じて人型になろう』

「周りの人も、人型になるか、少し離れていてくださいね」


 シャトルポッドを取り囲んでいた全員が人型になったところで、シャトルポッドのハッチを開けて、竜姫が顔を出す。


「おお、竜姫様で間違い無いぞ」

「お懐かしや、よくぞご無事で参られた」


「それではお父様の所に案内して」

「かしこまりました」


 セキドラが先頭に立ち、シャトルポッドを誘導していく。


 しかし、ドラゴンって人形でも空を飛べたのか! 羽根もないのにどうやって飛んでるんだ?

 魔法がある世界で今更か。


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