第135話 その頃カイトは、ドック

 ステファの依頼で女の子四人を乗せて、セイヤを追って帝国に行くことになった。

 ステファには急かされたが、魔力を充填しないことには帝国までは行けない。それに、レアメタルの採取中であったため、積み荷のレアメタルもどうにかしないと、寝る場所を確保するのも大変な状態だ。

 ステファは渋ったがドックに寄ることにした。


 ドックに到着すると、早速レアメタルの荷下ろしと、魔力の充填を始めたが、魔力の充填完了までにはしばらく時間がかかる。待っている間に食料品などの買い出しに行くことにしよう。


「ステファ、待ってる間に俺は食料品の買い出しに行ってくるわ」

「そう、わかったわ」


「カイトさん、買い物なら私も一緒に行っていいですか?」

「構わないけど、ヨーコちゃんは何を買うんだ」


「それは、その……」

「カイト、女の子に根掘り葉掘り聞くんじゃないわよ」

「そうなのか? 悪い」

「あ、大丈夫ですよ。行きたいところは洋服店です」


 ステファに注意されてしまったが、ヨーコちゃんは気にしていないようだ。

 俺は、ヨーコちゃんと連れ立って買い物に向かった。


 街に着くと、先ずは二人で食料店に入った。

 そこで、ヨーコちゃんの好みなどを聞きながら買い物を済ませる。


 食料品の買い出しが終われば、次は洋服店だ。

 ヨーコちゃんが選んだのは、女性の服を専門に扱うお店だった。


「カイトさん。すぐに済みますから、外で待っていてください」

「わかった。ここで待ってるから、時間までゆっくり選んでくるといいよ」

「すみません。では行ってきます」


 流石に女性服専門店に男の俺は入りにくい。外で待つことにして、魔力の充填が終わるまではゆっくり選んでいいと伝えた。


 ヨーコちゃんが店の中に入ると、それを持っていたかのように、柄の悪い男が三人現れた。


「よう。にいちゃん。新人のくせに随分と羽振りがいいようじゃないか」

「毎回レアメタルを山のように取ってきて。どこから取ってきたか俺たちに教えてくれよ」

「しかも、今日は女連れかい。いい御身分だな」


 頻繁にレアメタルを持ち込みすぎたようだ。厄介な奴らに目を付けられてしまった。


「飯の種をそう簡単に教えられるわけがないだろ。それに、あの女の子は、これから帝国に連れて行くように頼まれている依頼人なんだ」


「ほー。帝国まで狭い船内で二人きりか。その依頼俺たちが代わってやろう」

「いや、他にもいるし、知り合いなんだ、指名依頼だから変わるわけにはいかない」


「このクソガキ。新人のくせに、口答えするとは、生意気なんじゃないか」


 男の一人が、俺の胸ぐらを掴んだ。

 三対一か。流石に分が悪いな。どうしたものかな。

 どうすべきか考えていたところに、女の子の声がした。


「そこの者たち、カイト様に何をしているのです」


 ヨーコちゃんが戻ってきたのかと思ったら、そうではなかった。

 声の主は、メイド服を着た女の子で、一緒に執事服を着た初老の男性も立っていた。


「暴力を振るう気ならば、通報いたしますが」

 執事の男性が威圧のこもった声で男たちに言い放った。


「チッ」

 男たちは舌打ちをして去っていった。


「カイト様、ご無事でしたか」

「ええ、大丈夫です。助かりました。ところで、あなた方はどなたです。面識はありませんよね」


 その割には、俺の名前を知っていて、しかも、様付けで呼んでくる。一体何者なのだろう?


「失礼しました。私、元ヒアデス王国で、国王付きの執事をしておりましたアインと申します」

「私はメイドのアマテル。よろしくお願いします」


「あ、これはどうもご丁寧に。俺はカイトです」

 ヒアデス王国なんて、聞いたことないけど、セイヤの星も聞いたことなかったし、どこかの田舎の王国なのだろう。


「ヒアデス王国は、エリアEにある小国でしたが、今は連邦の一部です」

「今は連邦の一領ですけど、王室の存続は認められているんですよ」

 俺が疑問に思っているのが伝わったのだろう。二人がヒアデス王国について説明してくれた。


「それで、カイト様には突然のことで、申し訳ございませんが、ヒアデスに戻って、国王になっていただきたいのです」


「え? どういうこと。俺が国王?」


 俺は、わけも分からず、混乱することになった。


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 下着を買って、服屋の外に出ると、待っていてくれるはずのカイトさんが見当たりません。どこに行ってしまったのでしょう。そんなに待たせたつもりはないのですが。


 周りを見渡すと、買い物袋が隅の方に置いてありました。

 確かめてみると、間違いなく先ほど買った食料品です。そして、その中から一枚の紙切れが出てきました。

「これは!」

 私は、食料品が入った袋を持つと急いで船まで戻ったのでした。


「はあ、はあ、ステファさん。ふー」

 走って戻ったので息が切れます。最近、運動不足でしょうか?


「ヨーコちゃんお帰り、そんなに急がなくても、まだ、魔力の充填は終わってないわよ」

「それより大変なんです。カイトさんが……」

「そういえば、カイトはどうしたの。女の子にこんなに荷物を持たせて。なってないわね!」

「それが、私が服屋で買い物している間に、カイトさんがいなくなってしまって、代わりにこれが」


 私は、置いてあった紙切れをステファさんに渡します。


「なに? メモ? 『俺は国王になるために、旅立つことになった。船は、次に会う時まで自由にしてくれていいから』なにこれ? どういうことよ」


「カイトさんは王子か何か、だったんですか?」

「そんな話聞いてないわよ」


「じゃあ、これって……」

「多分、詐欺にあってるわね」


「そうですよね。どうします?」

「船は、すきにしていいって書いてあるから、見捨てて行ってもいいんだけど……」


「流石にそういう訳にはいきませんよ」

「そうよね。取り敢えず手分けをして探しましょう。身ぐるみ剥がされて、その辺に打ち捨てられてるかも知れないわ」

「そうですね。ララサさんとアリアさんにもお願いしてきます」


 四人で手分けをして探しましたが、ドックの中で、カイトさんを見つけることはできませんでした。


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