第122話 ドラゴン戦

 ドラゴンが寝ている隙に、角を奪ってしまおうと考えているうちに、ドラゴンが目覚めてしまった。

 ドラゴンはこちらに気づいたようだ。


『俺様に何か用か?』


 ドラゴンって喋れたのか。いや、喋っているというよりは、これはテレパシー、念話か。

 でもこれなら、交渉が可能か。


「俺はセイヤと言います。お名前を伺っても」

『名前か。暫く使っていなかったが、そうだな……、俺様はブルードラゴンだから、ブルドラとでも呼んでくれ』

「そうですか、ではブルドラさん。角を分けてもらうわけにはいかないでしょうか」

『なんだ、喧嘩を売りに来たのか。それなら相手になってやろう』

「いや、喧嘩を売る気はないのですが」

『角を奪いに来たのだろう。ならそういうことだ。ではいくぞ』


 ドラゴンにとって、角を寄越せは、喧嘩をしようと同義語らしい。


 ドラゴンは大口を開けると冷凍ブレスを吐いてきた。

 冷気の塊がシャトルポッドを襲うが、シールドに弾かれる。


『ほー。あれを弾くか』

「キャプテン、こちらからも攻撃の許可を」

「ブレスをシールドで防げるなら、死なない程度に攻撃してもかまわないだろう」

「了解。シャトルポッドのビーム砲で応戦する」


 チハルが、ドラゴンに向けてシャトルポッドのビーム砲を発射するが、すんでのところで避けられた。

「巨体の割に動きが素早いな」

「ビーム砲を避けるなんて、普通では考えられない」


 確かに、ビーム砲は発射して仕舞えば、到達まで一瞬だ。発射してから避けたのでは到底間に合わない。

 ということは、発射の予備動作を見て避けているのか?

 ビーム砲発射の瞬間、シャトルポッドの動きが止まってしまうのだろう。その僅かな隙を見逃さないとは、信じられないほどの観察眼だ。

 そうなると、シャトルポッドからのビーム砲だけでは、攻撃を当てるのは難しいかもしれない。


『俺様最強!』


 ドラゴンの回し蹴りならぬ、回し尻尾攻撃がシャトルポッドに炸裂する。

 シールドがあるおかげで、壊れはしないが、弾みで遠くへ飛ばされる。


『なかなか頑丈だな』


「距離も取れたことだし、ここは一旦このまま引くか?」

「一度も攻撃が当たらないのが癪に障る」

 シールドがあるので負けることはないが、このまま戦っても、攻撃が当たらないのではこちらに勝ち目がない。


「ちょっと、追いかけて来るわよ」

 ドラゴンは、背中の翼を広げて飛び立ち、こちらに向かって来る。

 このまま見逃してはくれないようだ。


「チハル、上だ。上に逃げろ!」

「了解」


『逃げられると思うな』


 シャトルポッドはどんどん高度を上げていくが、ドラゴンもそれについて追いかけて来る。

 やがて、宇宙空間に到達する。


「ドラゴンって、宇宙空間でも生きられるのか?」

「種類によるんじゃないかしら」


 宇宙空間まで行けば逃げられると思ったが、甘かったか。

 そういえば、バッタも宇宙空間に生息しているんだったな。


 だが、宇宙空間まで出て仕舞えばやりようがある。


「チハル、オメガユニットは」

「抜かりはない。網を張って待機している」

「流石はチハル。準備がいいな」


「え、オメガユニットで攻撃したら、流石に死んじゃうわよ」

「大丈夫、攻撃はしない」

 チハルは、攻撃をする気はないようだ。


「オメガユニットには、攻撃以外にも使い道がある」

「ゲートを作ること?異次元に落としちゃったら意味ないじゃない」


「それじゃない。トラクタービーム」

「なるほど、まさに網を張っているわけね」

「さあ、うまく掛かってくれればいいが」


「キャプテン、目標地点通過」

「よし、どうだ」


 シャトルポッドを追って来たドラゴンが、オメガユニット四基から放たれたトラクタービームの網に引っかかる。


『なんだこれは?』

 ドラゴンはもがくが、トラクタービームからは抜け出すことはできない。


「悪いな。宇宙船を牽引するためのビームだ。簡単には逃げられないぞ」

『なに? 宇宙船! そういえば、ここは宇宙空間ではないか。いつの間にこの星の技術はここまで進んだのだ。もしかして、お前らエイリアンか?』


「いや、俺はこの星生まれだが、ステファはエイリアンといえるか?」

「失礼しちゃうわね。他の星から来たけど、エイリアンじゃないわよ」


『エイリアンでないとしても、他の星から来たのか! なら、ワープできる宇宙船もあるのか?』

「あるが、それがどうした?」


『あるのか! それならお前ら生かしておいてやるからその宇宙船を寄越せ』

「寄越せだと。捕まった状態で随分態度がデカイじゃないか」


『フン。こんな縛、本気になれば。グヌヌヌ。ハッ!』

「なんだと、トラクタービームを断ち切っただと」


『どうだ、俺様が本気を出せばこんなもんだ。はぁ、はぁ』

「随分と疲れているようだがな」


『うるさい! 兎に角、その宇宙船を寄越すか、俺様を他のドラゴンがいる星に連れて行ってくれ』

「連れて行けといわれても、宇宙船に乗れないだろう。その大きさじゃ」

『それなら心配ない。俺様は人型に変異できる』


 ドラゴンは見る間に人型に姿を変えたのであった。


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