第121話 ドラゴン探索

 ステファから聞き出したドラゴンを見つける方法は、落ち着いて考えれば誰でも思いつく、型破りでも奇抜でもない、ステファの考えにしては面白味のないものだった。


「つまり、衛生軌道上のオメガユニットに探索させればいいんだな」

「そうよ、それが一番確実よ」


 確かに、オメガユニットなら、探知能力は高いだろうし、ドラゴンならば、それなりの大きさがあるのだろうから、見つけるのも簡単か。


 オメガユニットを使うなら、チハルを呼んだ方がいいだろう。

 今、チハルは聖女と十二神教の神殿に行っていた。


 シリウスから帰ってきた聖女は、十二神教の異端審問会にかけられたが、そこで、俺が神であることを証明し、逆に宗教改革を始めたのだった。

 そんなこんなで、チハルを脚に、あっちこっち飛び回っている。


 俺はカードを使ってチハルに、戻って来るように通知を送る。


『了解』


 カードに返信が来てから待つこと三分、シャトルポッドに乗ってチハルが戻って来た。


「チハル、ご苦労さん。聖女は一緒じゃないのか」

「置いてきた」

「ナイス判断だ」


 聖女が来ても鬱陶しいだけだからな。

 俺は、チハルを褒めて、頭を撫でる。


「いいな」

 ヨーコが羨ましそうにしている。

 自分で大人だと言ったくせに、そんなところはまだ子供か。

 これが、聖女だと鬱陶しいところだが、ヨーコはまだ可愛げがある。

 俺は、ヨーコの頭も撫でてやる。

「えへへ」


「セイヤ、私には」

「なんだ、ステファも撫でてもらいたいのか」

「別に撫でてもらいたいわけではないけど、役に立ったなら正当に評価してちょうだいよ」

「そうだな。何か希望があるのか」

「ドラゴンの討伐には連れて行って」

「そうだな。シャトルポッドは三人乗り出し、いいぞ」

「やった!」


「え、私は?」

「何があるかわからないし、危険だからヨーコは連れて行けないな」

「私もセイヤ様とお出かけしたかったのに」

「また今度な」

「絶対ですからな。忘れないでくださいよ」

 ヨーコは大使としての仕事も頑張っているようだし、休みにどこかへ連れて行ってやるのもいいだろう。


「それで、何の用」

 そうだった。まだ、チハルに説明していなかった。

 俺は、チハルに事情を説明して、オメガユニットでドラゴンを探してもらうことにした。


「視覚情報の他、洞穴に篭っている可能性もあるから、魔力の探知も行う。ドラゴンの魔力が高ければすぐに見つかる」

「ステファ、ドラゴンって、魔力が高いのか?」

「ブレスを吐いたり、空を飛んだりするのだから、魔力は高いと思うわよ」

「あれは魔法なのか?」

「多分そうじゃないかしら?」

 ドラゴンチェイサーを自称する割には、ドラゴンのことに詳しいわけではないようだ。まあ、ステファだからな。


「見つけた」

「早かったな。で、どこにいるんだ?」

「これは……、北の海のドラゴン島」

「ドラゴン島?」

「地図にそう記されている」


「ちょっとセイヤ。まんまじゃないのよ!」

「そうですね。オメガユニットで探すまでもなかったのでは」

「いや、そんな島あるなんて、聞いたこともないけど……」

 ステファとヨーコの視線が冷たい。


「それじゃあ、ドラゴン島にレッツゴー!」

「誤魔化したわよ」

「誤魔化しましたね」


 そんなわけで、俺とチハルとステファはシャトルポッドで、ドラゴン島に向かった。

 残念ながらヨーコは留守番だ。


 ドラゴン島は周囲五十キロメートル程の火山島だが、島全体が樹海に覆われていた。

「それで、ドラゴンはどの辺にいるんだ?」

「火山の頂上から南に五キロ地点」

「一匹でいるのか?」

「この星に生息するドラゴンは現在それ一匹」


「セイヤ、それはまずいわよ。それを討伐してしまったら、この星のドラゴンは絶滅してしまうわよ」

「そうだな。少ないだろうとは思っていたが、まさか一匹しかいないとは……」

 一匹では繁殖させて増やすこともできない。


「必要なのは角だから、殺さずに角だけ奪って帰ろう」

「そう上手くいくかしら」

「まずは様子を見に行ってみよう」


 シャトルポッドでそばまで近付くと、そこには、体長十五メートル程の青く煌めくドラゴンが横たわっていた。ドラゴンの頭には立派な角が二本生えていた。


「やった!ドラゴンよ、ドラゴン。ブルードラゴンかしら」

 ステファが念願のドラゴンに大興奮である。


「寝ているのか」

「寝ている間に、角だけ奪ってくる」

 チハルがどこからかノコギリを取り出す。

「チハル、流石にそれは無理があるだろう」


 ノコギリで切ろうとすれば、どうしたって目を覚まし暴れるだろう。

 暴れないように固定しておくか、目を覚さないように麻酔を掛ける必要があるだろう。


「ステファ、起きないように、そばまで行って麻酔を掛けてきてくれ」

「なんで私?」

「ドラゴンチェイサーなんだろ。それに、隠密魔法が使えただろ。それを使えばドラゴンを起こさずに済むはずだ」

「そんな、冗談言わないでよ」

「冗談はさておき(半分本気だったが)、本当にどうしたものだろう」


 そんなことをしているうちに、ドラゴンが目を覚ましてしまった。


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