第102話 断罪

 異次元に潜航中は、敵に見つかることもなく、無事にカエデとモミジと合流ができた。

 これでもう一安心だ。

 この二隻に守られていれば、近衛第二艦隊の集中攻撃だろうとびくともしない。


 そして、しばらく待つと、プロキオン境界警備艦隊十二隻もやって来た。


 これで、いくらなんでも第一王子もこちらに攻撃はできないだろう。

 近衛第二艦隊は八隻だ、こちらが数で二倍近くなる。戦うことになっても負けることはないだろう。


 俺たちは、十五隻で艦隊を組むと、先程逃げて来た道を逆戻りする。

 残った海賊を掃討しながら、近衛第二艦隊を見つけ、第一王子を断罪せねばならない。


 近衛第二艦隊は、俺たちを見失った宙域で、まだ俺たちを見つけようと躍起になっていた。


 そこに俺たちが艦隊で登場する。


 流石に攻撃を仕掛けてくることはなく、こちらの要求通りに通信妨害が解除され、通信回線が開かれた。


『姉上。ご無事で何よりです。海賊船に乗っ取られたとの情報があり、心配しておりました』

「白々しいぞ、カークス。私が乗っているのを知ったうえで、こちらを攻撃してきたな」

『いえ、そのようなことは、ございません。あくまで、海賊討伐のため攻撃したまでです』


「そんな戯言が通るわけがないだろう。艦隊司令はどうした」

『あの者は不適任であったため、罷免しました』

「そうか、艦隊司令を出せ」

『この場にはいません』

「なら、連れてこい」


 第一王女の命令で、近衛第二艦隊司令官がモニターの前に連れて来られた。


『王女殿下。ご無事で何よりです』

「挨拶は不要。私の権限で、貴公を艦隊司令官に復帰させる」

『姉上、それは越権行為です』

「いや、カークスお前には、国家反逆罪の容疑がかけられた。王族としての権限は凍結。司令官、その者を拘束し、シリウスの留置所に放り込んでおけ。プロキオンから戻り次第、裁判にかけてやる」


『姉上にそんな権限はないでしょう。我輩も王族なのですよ』

「私一人ではな。だが、忘れたのか、こちらには王族がもう一人いるんだ」


『その得体のしれない男なら、王族だとは認められませんよ』

「おいおい、本当に忘れられているようだぞ、ステファ」


「ええ、いくらなんでも酷いですよ。これでも第五王女ですよ」

『ステファニア……』

 第一王子は目を丸くして、開いた口が塞がらないといった様子だ。

 ステファのことなど全く眼中になかったのだろう。


「ということで、王族二人による告発だ。大人しくシリウスで最後の時を待つんだな」


 モニターの向こうの第一王子は、悔しさと怒りを込めてこちらを睨んでいたが、司令官の指示で拘束され連行されてしまった。


 珍しくステファが役に立った。明日には槍が降るんじゃないか。

 いや、ビーム砲を受けたばかりだ、それは勘弁願いたいところだな。


 とりあえず、今回の件はこれで一件落着、後のことはプロキオン境界警備艦隊に任せて、俺たちはプロキオンに向かう航路に戻ったのだった。


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