第78話 レース大会予選
借金返済のためにシャトルレーサーのレース大会に出場することになった俺であったが、今日はいよいよ大会当日である。
シャトルレーサーが完成したのが一昨日で、練習できたのは昨日一日だけだったが、こんなので本当に優勝できるだろうか。
今日、優勝して賞金がもらえないと、船を差し押さえられてしまう。
大会は午前中から予選が始まり、本戦は午後からとなる。
予選は単純なスピード勝負で、コースの周回タイムを競う。的を攻撃してポイントを加味するのは本戦だけだ。
出場者は全部で三十六組、予選は三回に分けて行われ、一回のレースに出場するのは十二機である。
それぞれのレースで上位二名と、それ以外で速かった二名の計八名が本戦に進むことになっている。
俺たちが出場するのは予選の三回目で、既に予選の二回目まで済んでいる。
因みに、予選の一回目は、謎の覆面王女チームがトップで、二回目はこれまた謎の覆面将軍チームがトップだった。
謎の覆面が流行っているのか? 俺も覆面を被るべきだろうか……。
それにしても、謎の覆面王女チームって、明らかに第四王女のエリザベートだよな。正体を隠す気があるのか?
『それではこれより予選第三回戦を行います。出場者の紹介です。ゼッケンナンバー31番、ブラッククローXチーム、機体はカラスマV』
前にいる黒い機体に乗った男たちが手を振っている。
『続きまして、ゼッケンナンバー32番、謎の覆面王子チーム、機体はピザキャップ』
おお、謎の覆面チームが他にもあったか。あれ、チハルはなぜ手を振っているんだ?
「キャプテンも早く手を振る」
「ん? 手を振ればいいのか」
俺は、チハルに合わせて手を振る。
「ところでチハル、俺たちは何番目に紹介されるんだ」
「今紹介されたところ」
「え、今? ということは、謎の覆面王子チームが俺たちのことか。チハル、聞いてないんだけど!」
「任せると言われた」
そういえば、チハルにチーム名などをどうするか聞かれた気もする。
その時は、チハルが大会に出られて楽しそうにしていたので、チーム名もチハルが決めていいと言ったのだ。
「そうだったな……」
「何か不満でも」
「いや。ただ覆面を被らなくていいのかなっと」
「キャップの裏に目隠しが付いている」
そういえば、今朝チハルに帽子を渡されて被っていた。
確認してみると、前立メッシュの部分にご丁寧にセルメガネが仕込まれていた。
「ああ、これね」
これは、やらないといけないやつか。
折角チハルが用意したのだからな、仕方がない。
俺は、帽子から目隠しを立て、被り直すのだった。
世の中が緑色に見えるな……。
出場者の紹介も終わり、いよいよスタートだ。
『それでは、いよいよスタートです。三二一、ゴー』
チハルがいきなりフルスロットで飛び出す。
慣性制御装置を付けておいて本当によかった。
なければ今頃気絶しているところだ。
予選では的当てはないので、俺は魔力を込めることに集中する。
スタートダッシュが効いて、一気に先頭に立った俺たちは、その後、チハルによる緻密なコース取りにより、そのまま先頭でゴールを切り、全く危なげなく予選を通過することができた。
ちなみに俺たちの組の二位は、ゼッケンナンバー31番、ブラッククローXチームだった。
総合順位は、トップが謎の覆面王女チーム、次が俺たち謎の覆面王子チームで、三位が謎の覆面将軍チームになった。
謎の覆面が上位を独占した形だ。こんなんでいいのか?
「慣性制御装置がなければトップだった。今から外す」
「ちょっと待て! 本選では、その分俺がポイントを稼ぐから」
「外すのは簡単。ボタン一つ」
「いや、だから、慣性制御装置は必要だから!」
俺たちが言い合っているうちにピットに戻っていた。
本戦は休憩を挟んで午後からだ。
ピットではみんなが待ち構えていた。
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