第64話 戦闘
俺は武器を持ったままシャトルポッドを降りると部屋の中に入る。
チハルはシャトルポッドに乗ったまま、ドア越しに攻撃できるように体制を整えている。
部屋の中にはリリスとアリアがいた、兵士に捕まり武器を突きつけられている。
兵士は三人、他に司令官らしき男、こいつは男爵令嬢の執事だった男だ。
それと、もう一人、女の子がいた。男爵令嬢ではない。何者だろう? 兵士には見えない。
シャトルポッドは三人乗りだ。講習中リリスたちと一緒に乗り合わせていて巻き込まれたのか?
「武器を捨てて出てこいと言ったはずだが?」
「見す見す殺されるのがわかっていて、手ぶらで出てこないだろう」
「こっちには人質がいるんだぞ、わかっているのか!」
「わかってないのはそっちじゃないのか。シャトルポッドで攻撃すれば、シールドがあってもただじゃ済まないぞ」
「人質がどうなってもいいのか?!」
「影武者では人質として役に立ちませんよ」
「影武者? 何を言っている」
「言った通りです。その娘は私の影武者にすぎません」
ララサがチハルのシャトルポッドの影から姿を現した。
そう、聖女でなく、ベールを取った状態で出てきたのだ。
勿論、見た目はリリスと瓜二つ。
流石にこれには敵の兵士も動揺した。
その隙を突いて、俺はリリスを捕まえている兵士に突っ込んだ。
兵士がこちらに銃を向けて撃ってきたが、シールドがそれを弾く。
「セイヤ様!」
リリスが叫ぶが、そのまま兵士の懐まで突っ込むと、兵士のシールド発生装置に魔力を込める。
プッシュー!
シールド発生装置が魔力の込めすぎで煙を上げる。
すかさず、至近距離から魔導拳銃を撃ち込む。
兵士はそのまま伸びてしまった。
「リリス」
「セイヤ様」
俺はリリスを抱き寄せる。
一方、アリアは俺が突っ込んだと同時に、自分を捕まえていた兵士に当身を食らわせると、何故か執事が持っていた自分の刀を奪い取り、そのまま執事に斬りつけた。
バチバチバチ!
アリアの刀と執事のシールドがぶつかり合い激しく火花を散らしている。
「アリアさん危ない!」
他の兵士がアリアに向けて銃を構えるのを見てララサが叫ぶ。
アリアは敵の兵士が放った攻撃を刀で切り捨て、距離を取る。
魔法の攻撃を刀で防ぐなんて、いくら魔導剣でも、アリアは普通ではない。
敵に腕輪を取られてしまったようだ、リリスとアリアにはシールドがない。
「アリア、無理をするな」
俺の視界の隅で女の子がふらりとララサの方に寄っていく。
「ララサ、その女は敵です!」
リリスが叫ぶ。女の子は剣を携えていた。ララサは驚いて後ずさる。
アリアが一瞬で女の子に近付くと刀を素早く振う。
「お嬢様の腕輪、返していただきます」
シールドがあるはずの女の子の左腕が飛んだ。
「ぐっ。シールドがあるはずなのになぜ?!」
「シールドの魔力が切れるまで、何度も斬っただけです」
アリアはあの一瞬で何度斬ったというのか。全くわからなかった。
アリアは切り落とされた左腕から腕輪を二つ外す。
俺が渡した、リリスとアリアの腕輪だ。
でも、切り落とされた腕に付けていた物を返されても困るだろう。
血だって付いてるだろうし。
と、思ったが、女の子は斬られた左腕を押さえているが、血が出ている様子はない。
ん? 義手。もしかして、アンドロイドか?
これで、残る敵は、執事と兵士二人。女の子は左腕を失っているが戦闘可能。リリスとアリアは救出できたので、これ以上は無理して戦う必要はない。シャトルポッドに乗って逃げればいい。
だが、男爵令嬢には一言言っておかなければならないだろう。
「男爵令嬢はどこにいる?」
「お嬢様は帝国本国だ」
「なんだ、ここにいないのか。遠くから指示だけ出してるわけか」
そうなると、俺を襲った理由を確かめて、これ以上襲ってこないように話すのは無理か。
『キャプテン。デルタとの通信が妨害されている』
チハルがシャトルポッドの中から、機外の拡声器を使って伝えてきた。
伏兵がいるのか?!
執事の顔を見る限りでは、そんな感じには見えない。
だが、早く脱出した方がいいだろ。
「リリス、シャトルポッドに乗って逃げるぞ」
俺は執事たちに背を向けることなく慎重に後退していく。
「平民が、帝国の軍艦を襲ってただで済むと思うなよ!」
「リリスのことを攫っておいてよく言えたな」
「ふん。所詮は平民だ。どうとでもなる」
まあ、一応これでも王族なんだけどね。それを前面には出せないところが辛いな。
「それがそうではないんだよね。セイヤ様は王族だよ」
あれ、誰だ、俺の正体ばらしたの。でも、この声、リリスでも、ララサでも、アリアでも、チハルでもないな。
俺が後ろを振り返ると、兵士がぞろぞろ入って来た。軽く十人は超えている完全武装の兵だ。
俺は入ってきた兵士に銃を突きつけられる。
だが、それは俺たちだけではなかった。敵の執事と兵士も同様に銃を向けられていた。
帝国軍というわけではないのか?
「あ、その人がセイヤ様だから。失礼のないように」
「は! 失礼しました!」
兵士は俺に向けていた銃を下ろして、敬礼した。
「ステファ?!」
兵士と一緒に現れたのはステファだった。
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