第63話 その頃リリスは、囚われ中
今日はシャトルポッドの講習会の二日目、実際にシャトルポッドを操縦することになります。
昨日は、シミュレータというもので、練習しました。その成果を出せるといいのですが。
「それでは皆さん、今日はシャトルポッドを実際に操縦してもらいます。シャトルポッドは三人乗りですので、三人一組のグループを作り、グループ内で交代しながら操縦してください。では、三人組を作ってください」
「アリア、三人組だそうよ。後一人どうしようかしら?―」
「そうですね。できれば女性の方がいいでしょうか……」
「そうね……」
私が周りを見渡すと、一人に女の子が近付いてきました。
「あの、よかったら私をグループに入れてください」
ぱっと見、気の弱そうな女の子です。
「アリア、いいかしら?」
「よろしいのではないでしょうか」
「私はリリス、こちらはアリア、今日一日ですが一緒に頑張りましょう」
「入れていただけるんですか。ありがとうございます。あ、私はマヤといいます。よろしくお願いします」
「マヤさんですね。こちらこそよろしくお願いします」
そして、私たちはマヤさんを入れた三人でシャトルポッドに乗り込み、練習コースを飛ぶことになりました。最初は、私、次はアリアが操縦します。
アリアが操縦している間は、私とマヤさんが後ろの席に並んで座って、アリアの操縦を見学です。
「アリアさんもお上手ですが、リリスさんもお上手でしたね」
「いえ、それ程でもないです」
「私は駄目駄目なので、揺れたらごめんなさいです。初めに謝っておきます」
「上達するための練習ですから、いいんですよ」
「リリスさんは優しいですね。あら、その腕輪はどうされたんですか?」
「これですか。いただいた物ですが……」
「少し見せてください!」
「えっ、ちょっと、無理矢理外さないでください!」
マヤさんに、セイヤ様からいただいた腕輪を無理矢理に取られてしまいました。
「お嬢様! マヤさん、何をしているのです!」
操縦していたアリアが振り返ります。
「おっと、動くな!」
「えっ!」
マヤさんが、私に短剣を突き付けます。
私は驚いて動きを止めます。
アリアが刀を引き抜いてマヤさんに斬りかかります。
バチ!
火花が散って、刀がシールドに弾かれます。
「おっと、危ない。いきなり斬りかかるか? この腕輪のおかげで助かったぜ」
「お嬢様を離せ!」
「そうはいかないな。次に抵抗したらお嬢様を刺すぞ」
「何が要求だ?」
「まずは、その腕輪も渡してもらおうか」
マヤさんがアリアの腕輪も要求します。
アリアが仕方なく腕輪を外してマヤさんに渡します。
「では、次に私が言った場所に向かってもらおうか」
「どこへ連れていく気だ?」
「行けばわかる。さっさと操縦しろ」
アリアは言われるままにシャトルポッドを操縦します。
向かった先にはサソリのような形をした宇宙船がありました。
その背中部分が開いて、シャトルポッドはそこに入っていきます。
シャトルポッドが着艦すると、周りを兵士に取り囲まれてしまいました。
「降りろ! まずはそっちの女からだ」
先にアリアが降ろされ、続いて私とマヤさんが降ります。
「そっちの女が奴の婚約者か?」
「そうです」
兵士の中にいた執事風の男がマヤさんに確認します。
奴というのはセイヤ様のことでしょうか? そうだとすると、狙って攫われたことになります。
「で、こっちの女は護衛か。物騒な物を持ってるな。こっちに寄こせ!」
兵士がアリアに近付き、刀を奪い取ると、執事風の男に渡します。
「ほう。なかなかの物だな。後で、こいつで奴を切り刻んでやろう」
「そんなことは、させません!」
私は執事風の男に駆け寄ろうとしますが、マヤさんが離してくれません。
「威勢がいいな。奴が来るまで暫く時間がかかるだろう。その間楽しんでやってもいいんだぞ?」
「やれるもんならやってみなさい!」
「お嬢様に手出しはさせませんよ!」
相手にシールドがあるとしても、大規模殲滅魔法を至近距離からぶつければ刺し違えることぐらいはできるでしょう。
「奴が来る前に死なれては、人質の役に立たなくなるな。楽しむのは奴を殺してからにするとしよう」
なんて下劣な人なのでしょう。
「一体、あなたたちは何者なのですか?」
「何者かって? そうだな、教えておいてやるか。我々は帝国軍だ。もっとも、私は今は男爵令嬢の執事をしているがな」
「帝国軍がなんでセイヤ様の命を狙っているのです?」
「お嬢様の命令だ。ライセンス講習の時一緒になって、気に食わなかったようだな」
「気に食わなかったからと命を狙っているのですか!」
「お嬢様は気性が激しい方だからな」
何ともとんでもないお嬢様なようです。
「奴が来るまで暫く監禁しておけ」
男に命令された兵士に引っ立てられ、アリアと一緒に、牢屋のような場所に監禁されてしまいました。
セイヤ様のことですから、きっと私を助けに来てくださるでしょう。ですが、それはセイヤ様を危険に晒すことになります。
できれば止めていただきたいのですが、今の私にはできることがありません。精々、セイヤ様の無事を祈るくらいです。
祈り続けること三時間。船の中が慌ただしくなってきました。セイヤ様が助けに来てくださったのでしょう。
「おい、出ろ!」
兵士が来て、私たちは牢屋から出され、広い部屋に連れてこられました。
そこには、兵士の三人と、執事の男、マヤさんがいました。
みんな何やら慌てている様子です。
「くそう! 相手の船をズタズタにしてから、乗り込んで行って、奴を痛めつけて殺す予定だったのに。何故、こちらに攻め込まれている?」
「わかりませんが、相手の攻撃でこちらの魔導ジェネレーターが停止しました。現在、艦の兵器類もシールドも機能しません」
「敵は、シャトルポッドで艦内をこちらに向かっています。携帯兵器では歯が立ちません」
「こうなったら、人質を盾に、ここで迎え撃つぞ。人質がいる限り、こっちが有利だ!」
どうやら、セイヤ様がこちらに乗り込んで来たようです。
「セイヤ様、どうかご無事で……」
私はより一層強く願うのでした。
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