宇宙船編
第5話 着船
宝物庫にあった謎の球体はシャトルポッドだった。
今、俺はそれに乗り込み宇宙空間を飛んでいる。
シャトルポッドは既に衛星軌道に到着し、惑星セレストを周回するコースをとっていた。
下に見えているのは、ヒギエラ公国辺りだろうか。
セレスト皇国はとうに通り過ぎている。
この惑星の名前はセレスト。俺の住む国と同じ名だ。
神話では、ある時、十二柱の神々が原始人と獣しか住んでいなかったこの星に舞い降りた。そして、最初に作った国がセレスト皇国だ。
その後、神々は一つの教会と八つの大公領を作り、原始人に農業と文字と魔法を教えた。
それが今の十二神教会であり、公国や大公領の基である。
王族の魔力が高いのは、神々の子孫だからと伝えられている。
俺の魔力が高いのを先祖返りだと言われているが、神々の血が濃い祖先の方が今の王族より魔力が高かったためそう考えられているようだ。
もっとも、これは神話であり物語であって事実ではない、と思っていたが、神々かどうかは別として、誰かがこの星に舞い降りたのではないかと思えてしまう。そんな光景が目の前に映し出されていた。
衛星軌道を周回していた俺の前に、巨大な球体が見えてきたからである。
遠近感がよく掴めないが、直径が百メートルはありそうだ。
シャトルポッドはそれにゆっくり近づいて行く。
『着船シークエンス開始。母船上部ハッチ開放。――。解放確認。着船します』
巨大な球体の上部に五メートル位の穴が開き、そこに向けてシャトルポッドは降りて行く。
『着船。機体固定。ハッチ閉鎖。格納庫内気圧確認。気圧正常。着船シークエンス終了』
どうやら無事に到着したようだ。
母船と言っていたが、ここがドックだろうか? 同じようなシャトルポッドが他に三機並んでいる。
ガチャ。プシュー。ウィーン。
機体の後ろの扉が自動で開いた。
『キャプテン。マーカーに従ってお進み下さい。ブリッジにご案内します』
俺は、音声の指示に従ってシャトルポッドから降りると、床に映し出された矢印を追って歩き出した。
格納庫の壁の扉は自動ドアで、近づくと自動で開いた。
ドアの先は廊下ではなく、行き止まりだった。どうやらエレベーターだったようだ。
中に入るとドアが閉まり、揺れはなかったが動き出したのだろう。ドアの横にある数字が、十から九、八、七と減っていき、六で止まって再び扉が開いた。
エレベーターから降りると、左右に廊下が延びていて、矢印は右を指して進んで行く。俺もそれを追いかける。
廊下を少し歩くと正面の扉がブリッジの入り口だった。
中に入るとそこは小さなプラネタリウムといった感じだ。
全周スクリーンが満点の星を映し出していた。
座席数は全部で十二。俺はマーカーの指示に従って中央の一番立派な椅子に座った。
まさにキャプテンシートである。シートの座り心地を確認していると機械音声が聞こえてきた。
『キャプテンの到着を確認、本船は緊急シークエンスに従い、只今より第2857ドックに向け発進します。到着は、ワープ4で十日後の予定。――。エラー発生、ワープ4では魔力が不足します。対応策の指示が必要です』
ドックとは、この船の格納庫のことではなかったのだな。
もう、ここまで来てしまったら慌てても仕方がない。
指示を出せとのことだが、どうしたものだろ。
取り敢えず適当に命令してみるか。
「俺を元いた場所に帰してくれ」
『緊急シークエンス中につき、それは不可能です』
ドックに行って、メンテナンスを受けるまでは帰れないということか。
行くしかないか。
リリスは心配しているだろうな。
シャトルポッドが発信する直前のリリスの様子を思い出し、申し訳ない気持ちになるが、こうなってしまってはどうすることもできない。
せめて、早くドックまで行って、メンテナンスを受けて帰ってこよう。
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