小さな袋
このほころびのなかへ
わたしの感情をそっと集めた。
こぶをもった枝の大動脈、
その割れ目から光がこぼれるような小さな袋。
感情という命の熱が
手のひらにつたわってくる。
小動物を手に抱きとめたような
柔らかい肉の感触と温もり。
わたしは幼いころからずっと抱いていた
悲しみや孤独や寂しさを
そっと頬にあてている錯覚を覚えた。
感情をつめたその小さな袋を
外套のポケットにしまって、
今度は街を歩いてみよう。
街は今まさに平穏に包まれ、
家族連れは時のない時に
たわむれている。
わたしは異端者のようにそれを眺めていたが、
ポケットには温もりをもった小さな袋が、
わたしの体温に抱かれるように眠っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます