第6話

「第一から第七打撃艦隊は最大全速で海岸から離脱し所定の位置で待機!第三十五水雷戦隊は敵の誘引!他艦隊はそれぞれ輪形陣を組んで雷撃の用意を!」


「「アイアイサー!」」

「砲雷撃班及び操舵はル・ファンタスク,機関員及び観測班はル・テリブルに分乗し、所定の艦へと向かえ!」


「「「「「はっ」」」」」




手際良く分艦隊に分けられていく大量の水雷戦隊と一際存在感を放つアイオワ、武蔵、大和を筆頭とする戦艦隊を横目に見ながら、舞山の操る艦隊総旗艦となるドイツ戦艦グナイゼナウはさながら艦隊の嚮導艦のように先頭でスイスイと海を滑っていく。


艦橋最上階から艦尾方向を見る彼の目に映るのは水平線いっぱいに広がる黒い艦影。馬鹿みたいに背の高いもの、主砲が前にしか付いていないものとかなり個性的なのもいるが、全体的に見れば良くまとまっている、と言うか壮観ですらある。


見渡す限り鉄、鉄、鉄。古今東西これほどの艦艇が集結したことはないだろうというレベルの大艦隊がたった一つの目標を撃破する為だけに集結していると言うのは、ある種の肌寒さを舞山に招く。


「ところで、臨時編成した乗組員連中は上手くやっているかな?」





どうも皆さんごきげんよう。小官は元国防軍第398強行偵察大隊が大隊長、現在は上級指揮官である高峯少将が「不慮の事故」で昏倒されているため、第58空挺師団の指揮を代理で執っている鈴木敦弘、階級は大佐でありま「大佐ぁ!このレーダーどうやったら動くんですかね!何押してもうんともすんとも言いやしません!ドイツ語なんて読めませんよ!?」

「いいから色々ガチャガチャやってみろ…って、これ電源入ってねぇぞ!one-offくらい書いてあんだろ!」


…オホン、取り乱しました。小官の率いる中隊は現在舞山と言う者の指揮下で戦艦グナイゼナウの機関員及び観測員として動いております。さて、ここで皆さんに一つ質問をば



…なんで俺、こんなところにいるんでしょうか…




事の発端は数時間前、無謀なHALO降下を強行しようとした高峯少将が部下によってシャべルの平たい方でパコンと…もとい部品の落下によって昏倒された後の事でした。


「総員衝撃に備えろ!ロータ一に不調発生、着水する!」


カキンカキンと言う小気味良い音とともにへリのローターに何かが直撃、後で分かったのだが降下勧告がわりのグナイゼナウの対空機銃が運悪くぶち当たった、との事。ひでぇ事しやがる。


ここで皆さんにーつの豆知識をお教えしましょう。表向きには私達のこの銃器は人には無害とは言われていますが実の所少し違います。実際には弾丸にぶち抜かれ無いと言うだけであり、質量と速度分の衝撃はモロに受けます。骨が折れるなどはしませんが8mm以上の口径の弾を受ければ痛みで気絶するくらいばザラです。


現に国防軍黎明期の第7師団では暴発したRPGによって建物1棟が倒壊、おまけに精鋭一個降下猟兵中隊が丸ごと軽い脳震盪で一時戦線離脱すると言う事故が起きています。


さてここで質問2つめ。戦車の装甲すらぶち抜く対物火器の口径を上回る弾丸が軍用ヘリに向かって乱射されたらどうなるか。答えは明確、一瞬で叩き落とされます。


「着水まであと数十秒!」

「総員パラシュート装着!准将殿も忘れるな!」

「ノロマなやつはヘリから叩き出せ!尻を蹴り飛ばしてもヨシ!とにかく脱出だ!」


こんなことに巻き込まれては堪らんと指揮官先頭の精神でとっとと逃げ出そうとした瞬間、


「総員何かに掴まれ。不時着用意」


聞き慣れない声の無線が響き渡ったかと思うと、三半規管がぶっ壊れたんじゃないかと言うレベルの衝撃と共にヘリが何かに不時着。外側からこじ開けられたドアの向こうに見えたのは…だだっ広い飛行甲板と1人の青年。


これが舞山(自称)准将との出会いでした





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魔物がはびこるこの国を、二次大戦兵器とともに生き延びる マイハル @Maiharu10

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