昇華試合
今、私は幸せな人間である。それは紛れもない事実であり1人の男と良好な関係を続けていることも事実を裏付ける要因である。
男は前の職場の先輩にあたる。現在私はフリーターを脱却し、兼ねてよりアルバイトをしていた飲食店に就職することになり男とは所謂遠距離恋愛というものをしている。
男は私よりも20いくつも上の歳の男。付き合った当初は頼りがいのある男性だと思っていた。だけれどもやはり月日が経つと昔付き合っていた男共と同様に甘ったれてくるし、優柔不断だし、かまってちゃんアピールがすごくてうんざりすることも多くなってくる。
これは恋愛経験がそこそこある女子なら分かると思うけれど、なぜか男は付き合ってしばらく経つと男の心の底で眠っている赤ん坊の部分がやけにこんにちはしてくることが多くなる。そんなことないって人はたぶんよくできた男と付き合ってるんだろう。
まぁそういう愚痴めいたことも踏まえて私は幸せなのだろう。片道1時間の距離を毎週苦でもないふうにこちらへ来てくれるし、仕事の休憩時間毎にメッセージをくれるし、私のことをだいじにだいじに扱ってくれる。幸せだ。幸せなのだ。
けどたまに、たまにこの幸せを手放したくなったり迷ってしまったりする。
歳上のくせに月末になると口座の貯金残高がマイナスになるし、許可もなく胸を触るし、とんでもないおならを平気でするし、寝汚いし、将来がまったく見えなくてどうしようもない気持ちが襲ってくる。
嫌な部分だけ見えてきて、そういう自分にも嫌なところはいっぱいあるのについつい棚に上げて男に酷いことを言ってしまう。だけれども男は怒ることなくヘラっとしていてそういう態度も鼻につく。
本当はこの男と付き合っていて幸せなのだろうかとほとほと疑問だ。幸せな人間になりたいだけで仮面を被って取り繕ってるだけなんじゃないだろうか。これは1度考えだすと本当に止まらない。
そういう時、1から振り返って昔の恋を思い出したりしてみるのだ。
今日は、眠れないから飲もうとしたほうじ茶のパックの袋に書いてた川柳にセーラー服に恋心を閉じ込めた的なことを書いていたので昔の恋を思い出すに至った。
思い出すのは高校1年生の時に付き合っていた2個上の先輩と幼なじみの彼。
先輩は今思えば私が子供だったから、SNSと上手く付き合うことが出来なかっただけで私がもう少し大人だったら上手くいってたのかもしれない。先輩が大学のために引越しするからお見送りに空港へ行った時に貰った手紙、キス、忘れたりしない。あれは私にとって本当に大切な思い出だ。大好きな人と離れちゃう時の胸の締め付けられる感じ、2人だけの世界。帰り道で涙ぐみながら見る手紙、何度も何度も読み返した。この時の気持ちがあれば別れるなんて選択肢なかっただろうにな。いつもいつもどこに初心な気持ちを忘れてくるんだろうか。
幼なじみの彼はついに今年は誕生日にメッセージもくれなかったや。彼と仲の良い共通の友達はくれたってのに薄情なやつ。資格の試験があるから、と私とは遊んでくれないのにライブにいったり彼女とは遊ぶ。いやまぁ友達より彼女優先して当たり前なんだけど、当たり前なんだけど!
遊べるんだったらランチくらい共通の友達踏まえて行ってもいいんじゃないか?と少々の不満はあるが疎遠になっているとは微塵も思わない。会えば今まで通りくだらないことで笑い合えるのだから。
何年も執着した恋はようやく友情へと昇華できそうなのだ。
完全に友情になるには今付き合ってる男との関係を常に良好に、あるいはその一歩先へと進まねばなるまい。
きっと私が完全に、完璧に幸せになるにはあの恋を友情だと言い切れるようにならなければいけないのだ。でないとありもしない未来を描いては今の自分と比べてしまう。理想のあなたを思い描いてしまう。私が恋をしていたあの頃よりもずっと背が高くて、ずっと声も低くなってしまったあなたで好きなように未来を想ってしまう。そんな虚しいことをしている限りは私は幸せになれないとわかってる。
だから、もう、私は今の男とどうにかなるしかないのだ。幸せに。
不誠実な執着 彩山 唯月 @Yama_ayu
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