幼なじみと執着

※1話の設定を引き継いでおります







私には幼なじみというものがいない


...と思っていた、ついこの間までは


君とメッセージを送りあっている時に私が、幼なじみがいてくれたらなぁもっとキラキラした青春を遅れたのに


そう呟いた


すると君は、あれ、俺たち幼なじみじゃなかったっけ、と返信してきた


ふと、思い返す


確かに私と君は幼稚園からの知り合いで、小学生の頃も1番よく遊ぶ大好きな友達で、片思い相手で


中学こそ思春期のなんとやらで遊ぶ機会も喋る機会も減ってしまったものの、高校を卒業する頃にはまた遊ぶ中に戻っていた


するとどうだろうか、もう15年以上は私の人生のメモリーに登場しているのだ


...確かにここまでくると幼なじみと言っても差し支えないのかもしれない


しかし私は知っている


幼なじみというものの大半は結ばれない


彼彼女らは別のぽっと出のどこともわからない馬の骨様様と付き合って幸せになっていくのだ


現に私たちがそうであるように


だから私はこの幼なじみという枷をはずしたい


幼なじみであるからいつまでもいつまでも結ばれないのだ私たちは


幼なじみであるからいつまでもいつまでも君に新しく出来た彼女の惚気話を聞かされる立ち位置にあるのだ


幼なじみであるから


幼なじみであるから、いつまでもいつまでもこうして君と他愛ない話をしたり気兼ねなく2人でお酒を酌み交わすとこができるのだ


幼なじみであるから、いつまでもいつまでも君のことを想っていられるのだ


だから私は幼なじみという枷を外したくもあるし、この幼なじみという関係に執着したりする


枷を外すデメリットよりも今の関係でいられるメリットのほうが圧倒的に大きいのだ


幼なじみという特権のおかげで、酔ったフリをして君に愛を囁くことだってできるし、抱きついたりできる


幼なじみでなければこんなことをしたらば、一瞬で私たちの今の関係は解消される


いつもお酒が体内を駆け巡ると思う


幼なじみという枠を脱出して君とひとつになりたい


幼なじみのままでいいから一生君と関係を持ちたい


このふたつの気持ちがいつまでもいつまでも私の心を蹂躙する


どちらも同じくらい大きな気持ちになって私という人間を食べ尽くそうとする


いつか、どちらかの葛藤が私を食い尽くした時、私のなかの執着心はどうなっているのだろうか


君にとっての私、私にとっての君


この関係性が変わっているのだろうか


そんなことを思う春先の夜、湯船の中

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