第4話:襲撃・ソランジュ視点

 私は内心の不安と恐怖に耐えながら国王陛下の側にいました。

 絶対に国王陛下の側から離れる事を許してはくれませんでした。

 万が一私が殺されるような事があれば、国王陛下の面目が丸潰れになってしまいますから、それもしかたのない事だと思います。

 

 ですかさすがに小用には行かせてくれました。

 ただそれでも一人で行かせてくれるわけではありません。

 小用にまで国王陛下の護衛が私を護るためについて来てくれます。

 それが私の油断につながってしまったのかもしれません。

 いえ、あそこまでやるとは思っていなかったのです。

 国王陛下も私も常識的過ぎたのです。


 小用部屋に入った途端、顔に信じられないほどの衝撃を感じてしまいました。

 私の記憶はそこで途切れてしまっています。

 後の事は国王陛下の護衛が教えてくれた事です。

 私が直接見た事でも覚えている事でもありません。

 ただ、顔が変形するほど無残に残る傷跡から事実なのでしょう。


 私を襲撃する直前に、刺客が抑えていた気配をもらしてしまったそうです。

 国王陛下が特別につけてくれた護衛でなければ感じ取れないほどの僅かな気配でしたが、それを察した護衛が私を護るために即座に小用部屋に入ってくれたそうです。

 ですが、絶望的な距離があったそうです。


 刺客を斃すことも刺客の剣を逸らすこともできない距離だったそうです。

 もちろん私を突き飛ばして刺客の剣から逸らすこともむりでした。

 護衛の方にできたのは、最悪の状況に備えて放つ寸前にまで準備していた手投剣を、私と刺客の剣の間に放つだけだったそうです。


 もし手投剣を刺客の急所を狙って放っても、私を殺そうとした剣を止めることができず、刺客は斃せても私を助けられなかったそうです。

 だから僅かな希望にかけて刺客の剣と私の顔の間に手投剣を挟んで、刃による斬り裂く力だけは防いで、衝撃力と打撃力だけにしてくれたそうです。


 そのお陰で即死だけは防ぐことだできたそうです。

 刺客が引き続き私を殺そうとしたので、護衛は半死半生の私を置いて刺客と戦わなければいけなかったそうです。

 ですが王家を出し抜いての暗殺を引き受けるような腕利き刺客も、国王陛下が私につけてくれた護衛には勝てなかったそうです。


 私は直ぐに護衛に介抱してもらったそうですが、仮死状態だったそうです。

 王家に仕える腕利きの治癒術士が全力で治してくれましたが、命を繋ぎとめるのが精一杯で、顔形まで元通りにはできませんでした。

 私の顔は二目と見れないほど潰れてしまいました。

 恐らくですが、刺客の雇い主であるセヴリーヌが、私の顔を潰して殺せと命じたのだと思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る