アイナ 5

 薄暗い森の中を、懸命に駆ける少女がいた。

 息を荒げ、額や首から汗水を流しながら、それでも休むことなく、出口の見えない森の中をひたすらに走り続けていた。

 その華奢な体は疲労感で満ちていたが、彼女には立ち止まるわけにはいかない理由があった。

「誰か……助けて!」

 恐怖に駆られ、思わず声を発する。数十メートル後方、深い暗闇の中からぎょろりと血走った目玉を輝かせながら、獣の群れが追って来ていた。

 夜の闇に紛れ、姿は見えずとも確かに背中に伝わってくる殺気。自分がどれほど恐ろしいものに追われているのか、少女は怖くてたまらなかった。

 きっかけは、ほんの出来心だった。

 危険だからという理由で、騎士を目指す夢を否定する父への些細な復讐心だった。反骨精神とも言えようか。その反抗的な態度は決して本心からのものではなかったが、ともかく、心の未熟さが故に行き至ってしまった結果が今の状況だった。

 ただでさえ凶悪な魔獣が多いと噂されている森の奥深くに、どうして夜遅くに、それもたった一人で足を踏み入れてしまったのだろうか。少女はひどく後悔していた。

「グギュルアアァ!」

「きゃああっ!」

 少女を威嚇するような、威圧的な雄叫びが木々の間に響いた。しつこく逃げ惑う獲物を決して逃すまいとする彼らの意志の強さが伝わってくる。

「はあ、はあ……もう、無理……」

 どれほど走り続けただろうか。森の出口は一向に見えない。もしかすると必死に逃げ惑うあまり、反対に森の奥深くまで潜ってしまったのかもしれない。

 呼吸が苦しい。体中の筋肉が痛い。これ以上は足が動かない。絶望が少女の頭をよぎった。

 そして、その瞬間——それを受け入れるかのように、自然と体の力が抜けていった。少女は走ることを止めると、突然、その場に前屈みに倒れ込んだ。

 「あれ。私、なんで倒れて……」

 ここで止まっていては獣たちに襲われてしまう。そんなことはこれほど怖い思いをして充分にわかっていた。

 わかってはいた——が、動かない。

 立ち上がろうと力を込めるも、手足がまったく言うことを聞かない。まるで自分の体が自分のものではなくなってしまったかのような、体から魂が抜けたような感覚——既に死んでしまったのではと錯覚さえしていた。

「死にたく、ない……」

 荒々しい足音が近づいているのが地面を介して伝わってきた。このままここで突っ伏していているわけにはいかない。

 しかし、そんな思いとは関係なく、少女の体はやはり起き上がる気力を持ってはいなかった。

「嫌だ、死にたくない……死にたくない……!」

 少女の悲鳴を搔き消すかのように、雄叫びを上げながら迫る獣たち。少女は、獣たちが自分のすぐ背後にまで来ていることが感覚的にわかっていた。

 群れの先頭を走る一頭が、少女に飛び掛かる。

「生きたい」という意思を塗り潰すように、脳裏に浮かぶ「死」への絶望。

 その瞬間、少女は死を覚悟した。

 ——ザシュッ。

 耳に届いた、厚い肉を鋭利な刃物で切り裂くような鈍い音。

 その途端、まるで失っていた意識を取り戻したかのように活力を得た少女は、咄嗟に体を起こし、背後で起きた光景を目の当たりにした。

「だ、誰……?」

 そこには、見知らぬ少年の姿があった。

 こちらに背を向け、佇んでいる一人の剣士。手には剣を持ち、少女に追った獣の群れを迎え撃とうと立ちふさがっていた。

 目の前で起きている予想外の出来事に言葉を失い、少女はただ呆然と彼の背中を見つめていた。

「大丈夫、ここは任せて」

「あなた、は……?」

 気づけば、獣の群れが彼のすぐそばにまで詰め寄って来ていた。

 仲間をやられたことで、少年にかなり警戒しているようだったが、やつらは腐っても野生の生き物だ。それでも獲物を逃すまいとする、その本能だけは絶えていなかった。

「いいから、逃げるんだ!早く!」

 少年に言われるがまま、少女は立ち上がる。

 救世主として現れた彼に背を向け、その場所から急いで立ち去った。

 それから、数年の月日が流れた。

 あの日以来、自分の命を救ってくれた少年に出会うことはなかった。でも、いつか必ず会ってお礼が言いたい。あなたのおかげで、私は生きています、と伝えたかった。

 少女は今も、その背中を探している。




 ――――




「えっと。アイナちゃん、大丈夫?」

 ヘクターの声で目が覚める。

 懐かしい夢を見た。見知らぬ少年に命を救われる夢を。

 その夢は、アイナの過去と酷似していた。夢は、本人の体験した記憶をもとにして形成されていると何かの本で読んだことがあるが、アイナがかつて体験した出来事も夢となって表れていた。

「何か、うなされてたよ」

 ヘクターが、心配だよ、といった顔で覗き込んでくる。

「ううん、大丈夫よ。私、いつのまにか寝てたみたい……」

「まあ、長い間、馬車に揺られていると、眠たくなるよね」

 あくびを噛み殺し、窓の外の景色を眺める。

 広い平原の上をのんびりと進んでいる途中だった。スピカの森のどこかにあるコユグの木を目指すということになっていたと思い出した。

 今は、その道中だった。

 王都からスピカの森まではかなりの距離がある。歩いていては日を跨ぐことにもなるだろう。そして野宿は危険と判断したため、馬車を借りることにしたのだ。

 王都を出て、随分と時間が経ったようだ。すでに日が傾いていた。

「どれくらい、進んだの?」

「もうすぐ森から最寄りの村に着くんじゃないかな。どうする?今日は、その村で宿を借りて、明日の朝、アイシャのラボに向かうって手もあるけど」

「今日中に行きましょう。急げば、夜を迎える前にラボに着くわ」

「よし、わかった」

 村に着いた。馬車を預け、アイナたちはスピカの森へと向かった。

 森の入り口は、村を出るとすぐに見つかった。

 雑多に植物が生い茂る森とは言えど、ここも人の手により開拓されている場所ではあるので、わかりやすく道ができていた。木々の隙間を縫うようにして長く伸びる一本の岩道。少し険しい気もするが、気にせず足を踏み込んだ。


 アイナたちの辿った道は、森の中の広場のようなところに通じていた。

 中央に一つ巨大な樹木がそびえ立ち、それを囲うようにして円の形になって開けた空間ができていた。

 幹は太く、刻まれた深い皺の数が、この樹木がいかに長い時を生きているのかを物語っていた。その逞しい立ち姿は、まるで歴戦の勇者を彷彿とさせるほど堂々たるものだった。

 この森の木はどれも背の高いものばかりだが、アイナたちの目の前にある樹木は群を抜いて巨大だった。根が地面から剥き出しになり、森中から栄養を奪い取ろうとせんばかりに、そこらに行き渡っていた。おかげで近くには他の植物が育たず、自然にこれほどの空間ができているのだろうと想像する。

「すごいなあ。王都の建物なんかよりも全然、大きいや」

「ここまで成長するなんてね。これが自然の生命力というやつかしら」

「うん。そして、これがコユグの木みたいだね」

 ヘクターが、レオニールからもらったオーブを取り出した。オーブを、目の前の木にかざす。赤紫色にぼやけた炎が水晶の中に揺れていた。オーブを手にしたまま、コユグの木に近づく。すると、炎の勢いが増した。間違いない。アイシャは近くにいて、ラボもこの辺りのどこかにあるということだ。

「どこだろう」

「木の反対側に回ってみましょう」

 コユグの木を中心にし、左回りに移動する。そのまま広場を一周した。しかし、それらしき建物は見当たらなかった。

 元の位置に戻ってくると、ヘクターが、お手上げといった風に首を振った。

「この木の近くにいると、輝きが増すんだよね」

 手の上でオーブを転がしながら、ヘクターは愚痴をこぼすように言った。

 アイナは、コユグの木の足元に近づく。たとえば幹の中が空洞になっていて、人が暮らせる環境が整えられている可能性だってある。

 幹はかなり大きなものだった。中に人が入ることもできるのかもしれない。地上に顔を出した根を跨ぎ、幹に近づく。アイナは手を伸ばし、その幹に触れようとした。

 その時、後ろを追っていたヘクターが、あ、と声を上げた。

「なに?」

「オーブの輝きが消えたんだ」

「そんな、どうして急に――」

「それは私が出てきたからです」

 振り返ったアイナと、顔を上げたヘクターの間に挟まるようにして、小柄な少女が立っていた。

 二人は反射的に剣を抜き取る。ヘクターはさらに素早く、謎の少女の首元に剣先を向けていた。

「何者ですか?あなた、いったいどこに隠れていたんですか?」

「そんな危ないものをこっちに向けないでください。大丈夫です。私はアイシャの『トモダチ』なのです。きっと、あなたたちともトモダチになれると思います」

 少女は目じりに皺を寄せる。怯えている様子は、まったく見られなかった。むしろこの状況を楽しんでいる節さえあった。

 アイナは身震いした。ドロシーと名乗ったあの少女と対峙した時と似た感覚が、体を走った。

 ヘクターの方を見る。同じように、只者ならぬ雰囲気を目の前の少女に感じたらしい。剣を握った腕が、微かに震えているように見えた。

「あなた、アイシャの知り合いなの?」

「知り合いというより、トモダチなのです」

 少女は、おかしな発音だったが、たしかに「友達」と言った。

「彼女を知っているのね。どうして、ここにいるの?」

「アイシャに頼まれたのです」

 少女は、ふわふわとした黄金色の髪を弄りながら、嬉しそうに体を左右に揺らしていた。その小さな体と可愛らしい容姿、人ならざる独特の雰囲気は、妖精の類に似ていると思った。

 少女はもはや、ヘクターから向けられた剣を気にも留めていないようだった。

「何を頼まれたの?」

「ここへやって来る王都の騎士たちを迎えてやってくれ、と」

「それって……」

「たぶん、僕たちのことだね」

 ヘクターが剣を収めた。

「いきなり、剣を向けて悪かったね」

「大丈夫です。私には慣れたことなのです」

 少女は、平淡な口調で言ってみせた。嫌な慣れだな、とアイナは思った。

「僕の名前はヘクター。そちらがアイナだ。よろしく」

「はい、よろしくです」

 少女は、ふふっと微笑む。年相応の可愛らしい表情だった。

「それで、アイシャはどこにいるのかしら。あなたが連れて行ってくれるの?」

 アイナも大人しく剣を鞘に収めた。ただ完全に警戒を解いたわけではない。彼女はアイシャと知り合いのようだが、本人と会うまでは信用できない。どう動いてくるのか、注意しておかなければ。

「アイシャには会えないのです。アイシャ本人に会いたいのであれば、あなたたち、少し遅かったのです」

 少女は残念そうに言う。景品が当たらなかったことを悔やむ子どもを慰めるような調子だった。

「どういう意味だい?」

「まあ、とにかくこっちに来るのです」

 少女が指をくい、と曲げる。その途端、アイナとヘクターの体が少女の元に引き寄せられた。

「何これ……」

「体が重い……」

 目には見えない、強い力だった。体の内側にフックを掛けられ、無理矢理に引っ張られているような感覚だった。抵抗しようにも止まらない。体が勝手に動き続けていた。

「あれ、失礼したのです。今、戻します」

 少女が言うと、体の自由が戻った。アイナは呼吸を整えながら、少女の方を見る。

「今の何……?」

「えっと、私の力と言えば、信じてもらえますか?あなたたち、他の魔女に会ったことがあるのですね」

「魔女……!」

「あれ、もしかして、秘密のことでした?」

 少女が首を傾げる。ヘクターと顔を見合わせた。

 魔女のような恰好をした少女を見たことはある。しかし、それは、おとぎ話の中の存在である魔女が、実際に、この世界にいるというわけではない。

 ただ、眼前の少女の今の言葉は、その存在を仄めかしているようだった。

「あなた、魔女が実在するとでも?」

「いますよ」

「あり得ないわ。魔女がいるのは、おとぎ話の中だけよ」

「今、私が誤って使ってしまった力は、魔女と関わりを持った者を引き寄せるといったものなのです。それに、あなたたちの前にもいるじゃないですか、ほらここに」

 少女が、自分の顔を指差す。呆れたような表情で、アイナたちを交互に見ていた。

 アイナは言葉に詰まった。ヘクターも同じように、少女をじっと見つめていた。

 そんな二人の様子を見て、少女は、あ、と口を開けた。

「あれ、もしかして、秘密のことでした?」




 ――――




 少女が、コユグの木の幹に触れると、視界が真っ暗になった。

 慌てて辺りを見回すと、いつのまにか、どこかの部屋へと移動していた。どうやら、アイシャのラボのようだ。それは、一瞬の出来事であった。

「どうやって……」

「あの木の幹には、転移装置が仕込まれているのです。キッカケを与えることで、この通り、瞬間的に別の場所への移動が可能になるわけです」

 奇妙な装置や機械の部品が所々に置かれた、広い部屋だった。

 部屋は広いのだが、いろいろなものが足元や作業台らしきテーブルの上に雑多に置かれていて、外から圧迫されている気分だった。

 明かりはなく、視界が悪い。長い間、日の光を浴びていないような、じめじめとした匂いもした。薄暗さと息苦しさが同時に漂うこの空間は、下水の道を旅しているかのような不快感さえあった。

「ここは、あのコユグの木の広場とは違う場所なの?」

「いや、すぐ近くです。転移とはいっても、限度があります。まだ改良が必要だとアイシャは言っていました。ドロシーの力からヒントを得て作ったみたいですが、まだまだ彼女には及びません」

「ドロシーのことを、知っているの……?」

 アイナが訊ねると、少女はぴくりと眉を上げた。

「おや、あなたが会ったことのある魔女というのは、ドロシーでしたか」

「ドロシーって、誰のこと?」

 ヘクターが、不思議そうな顔で訊ねてきた。

 言うべきなのか、アイナは言葉に詰まった。ドロシーのことについて、例の事件について、自分の知っていること、そして隠していることを、今、言うべきなのか。

 思い悩んだのは、ほんの一瞬だった。すぐに考えを改める。正義感を言い訳にして逃げ出したい気分だった。駄目だ。弱い自分を認めてしまっては、駄目なんだ。ここで告白しておかなければ。


 眩暈がした。視界が真っ白になる。

 気がつくと、何もない、虚無のような空間に放り出されていた。体を取り巻くのは浮遊感だ。手足の感覚がない。体の感覚も、もっと言えば、生きている感覚もだ。

 あるのは、自分の意識だけだった。

 朦朧とした意識の中で目を凝らすと、正面に人の姿が見えた。見覚えのある人物だ。それが自分とまったく同じ姿をしていることに気づいた。ああ、また彼女だ。胸の内に潜む、もう一人の自分。アイナの中にある正義の心が、アイナの姿を纏って、そこに立っていた。

「あなたの正義を信じるのよ」

 もう一人の自分が言う。夜風のように、さっと耳元を流れていく、冷たい声だった。

「でも、私の正義は……本当に正しいことのように思えないの。いろいろな人に迷惑をかけた。多くのものを失った。これから、また同じようなことを繰り返すんじゃないかと思うと、不安になるのよ」

「あなたは、誰」

「え」

 お前は誰だ、と自分自身の影に指摘され、思わず言い淀む。おかしな気分だった。私は私。アイナよ。そして、あなたも同じアイナなのよ、と言い返す。

「そう、あなたはアイナよ。父でも兄でも友人でも、他の誰でもない、あなた自身なの。この正義の心も、そうよ。父から受け継ぎ、周りの人たちに助けられ、育ってきた『アイナの正義』なの。誰のものでもないわ。自分の正義と向き合うの。そして、自分の欲望に正直になるのよ。使命感に踊らされては駄目。正義感に縛られては駄目よ。アイナ、あなたは自由な人間なの。あなたの真に思う正義こそが、この世界を救うのよ」

 言葉が出なかった。もう一人の自分からの言葉を、噛み締める。この答えを、いつまでも探していたのだと思った。誰かに言ってもらえることを待っていたのだと思った。だが、自分で辿り着いた。自分で気づくことに意味があったのだ。とも思う。

「私自身の、正義の心……」

 口にすると、胸の奥が温かくなった。見失いかけていたものを取り戻せたかのような、充実感があった。

「その思いを、父から託されたんでしょ?」

 もう一人のアイナが、すっと手を前に差し出す。そこには、父の大切にしていたブローチが握られていた。

 ブローチに優しく触れる。手にした途端、目の前の影は綺麗に消え去っていた。

 いつの間にか、眩暈がした感覚もなくなっていた。

 手の中には、父のブローチがあった。私の正義は、今、確かにここにある。私は私なのよ。アイナの正義を信じるのよと、何度も自分に言い聞かせた。


 目を開けると、ヘクターがこちらを覗き込んでいた。

 もう、隠す必要はないかと思った。自分でしたことを悔いることも、恥じることもしない。私の正義は正しいのだと信じるのよ。アイナは、心の中で高らかに叫んだ。

「ドロシーってのはね、地下牢にいた、例の黒い髪の少年を脱獄させた張本人なのよ」

 アイナの言葉に、ヘクターが「え」とこぼす。アイナは構わず、続けた。

「彼女、私に手を貸してくれって頼んできたことがあったの。夜道で薄暗かったから、顔はよく見えなかったんだけどね。大きな三角帽子とローブを身に着けた魔女のような恰好をした少女だったわ。昨日、ヘクターが城で見たっていう少女と、おそらく同一の人物よ」

「ちょっと待ってよ。それって、つまり……どういうことなの?」混乱した様子で、ヘクターは言った。

「ごめんなさい。余計なことを言って、混乱させたくなかったの。だから、確証が得られるまで黙っているつもりだったの。彼女が何者なのか、わかるまでね」

 ぐさっと何かが突き刺さるような痛みが走った。罪悪感というものに襲われる時はいつも同じ感覚がした。心の奥にある芯のような部分に、冷たい刃が触れるような嫌な感覚だ。

 寒気がした。熱を取り戻そうと、動悸がする。一度大きく息を吸い、吐く。呼吸を整えることで、頭の中をリセットする。

 そして、思い直す。私は自分の正義を最後まで貫くと決めたのだった、と。

「詳しくは後で話すわ。それでも、いいかしら」

「……うん、わかったよ。今は他に、優先しないといけないことがあるからね」

 迷いを捨てたアイナの目に、何を感じ取ったのか、ヘクターは快く了承した。

 アイナは、ふっと息を吐く。心が軽くなった。少しだけ救われたような気分だった。

「ドロシーのことを知っていて、自分のことを魔女だと名乗った。あなたは何者なのかしら?」

 謎の少女に向き直り、アイナは投げかけた。

「だから、アイシャのトモダチなのです。そして、魔女だということも本当です。ドロシーは、名前を知っているだけなのです。なぜなら、魔女だからです」

 意味不明なことを言う。

「そういえば、名前を聞いていなかったわね」

「私の名前は、マーベラスです。魂を司る魔女なのです」

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