6:土葬の少女
「おじいちゃん、またどこかの誰かが命を落としたね!」
「七夜の宴」の開催地へ至る最後の長階段の中途にて。
少女と老人が息切れ一つせずに階段を登りながら会話をしていた。少女の方は軽くスキップしながら老人に先行して階段を楽しそうに上り、それに合わせて二つにくくった彼女の黒髪が跳ねる。背の高い老人の方は身なりの良い恰好をしており、少女を微笑ましげに見つめながらゆっくりと階段を上っていた。
「さっき死霊になったのは〜…割と強そうなおじさん!怨嗟もたっぷり!これなら良い『素材』になると思うなー♪おじいちゃんはどう思う?」
幼女の問いかけに、老人が笑って首を振る。
「リリイ、そのおじさんは錬金術師だろう?魔術と錬金術は相容れないもの同士だから、『素材』には出来ないんだよ」
老人の話を聞いてしょげるリリイと呼ばれた少女。
「ちぇ〜っ。少しはリリイも『素材』集めが上手くなってきたと思ったんだけどなー…やっぱりまだまだお父さんが言うように「未熟者」なのかな~…」
「それでも、リリイは今まででいちばんの上達の速さだよ」
そんな少女を見て、すかさずフォローに入る老人。
「ほんと!?それじゃあおじいちゃんと一緒にリリイもこれから戦ったりできる?」
目をキラキラと輝かせて老人に尋ねる少女。老人は相好を崩して彼女の頭をなでる。
「それはリリイがこの『七夜の宴』で頑張れるかどうかにかかっているかな」
「ばっちりだよ!おじいちゃんも若い時に昔ここで戦ったんでしょう?だったら私にもできるもん!」
ここならいっぱい強い『素材』も手に入るし、リリイは何といってもおじいちゃんの「一番弟子の娘」だもんね!
そう言ってえっへんと胸を張る少女。
「ああ、そうだな。リリイならきっと…」
「…おじいちゃん?」
言葉が途切れた老人を不思議に思って少女が振り返ると、老人は立ったまま動作を停止していた。階段を上ろうと出した右足は着地することなくそのまま止まっている。
「おじいちゃん!こんなところで立ったまま寝ちゃったら風邪ひいちゃうよ?」
もーしょうがないなーと言いつつ少女が素早く術式を練り上げ、老人の心臓のある部分に手を当てる。
「契約者リリイ・コフィンの名において命じます!おじいちゃん、起きて―!」
少女が手を当てた部分が一度大きく脈打つと老人の身体全体に紫の光が散り、彼の右足が石段に着地した。
「ああ・・・リリイが起こしてくれたのかい?」
「そうだよー!おじいちゃんったら階段を上りながら寝ちゃうんだもん!」
むくれる少女にすまないねと軽く謝る老人。
「この『七夜の宴』ってすごい魔女さんや魔術師さんが集まるんでしょー?おじいちゃん一人じゃちょっと心配だなぁ…」
丁度踊り場のような石畳に差し掛かったこともあり、階段を上る足を止めてうーんと考え込む少女。老人は何も言わず彼女を見守ったままである。
「そうだ!おじいちゃんも一緒に戦える人がたっくさんいた方が嬉しいでしょ?リリイちょっと思いついたことがあるの」
何かに閃いたらしい少女がふふっと笑う。
「おや、一体どうしたんだい?」
「えっとね、こうするの!」
おもむろに短剣と
「おじいちゃんの血、ちょっと借りるね!」
老人のわき腹からあふれる液体を
「おじいちゃん、ありがとー!」
「ああ、リリイの役に立てたなら私も嬉しいよ。…それで、これを使ってどうするんだい?」
わき腹をさすりつつ怪訝そうな顔をする老人をよそに少女は
「契約者リリイ・コフィンの名において命じます!おじいちゃんのお友達がたっくさん欲しいなー!」
「これでおじいちゃんも寂しくないでしょ?」
ものの数分と経たない内に複数の自律した人骨、通称「
「…そうだな。寂しくないし、リリイが腕を上げたことを誇りに思うよ」
「リリイももう『土葬の魔女』だもんね~♪」
老人に撫でられた少女は嬉しそうにえへへと笑う。
「『土葬の魔女』のリリイと『土偶の魔術師』のおじいちゃんと、たくさんのお友達が一緒なら向かうところ敵なしだよ!」
それじゃ、行こっか!
そう言うと少女は再び階段を上り始めた。…今度はその後ろに老人と
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