無意味に「 」を続けることの意味
椋畏泪
第1話
「クソ! またやっちまった!」
俺は——Dead End——と表示されているモニターに毒づいた。
もはや午後の日課となっているオンラインゲームだが、初めて三週間、毎日ログインしているのに、未だ成長の兆しは見えてこない。
『雑魚乙www』
『今のは戦犯www』
などの言葉がチャットログをこれでもかと埋め尽くしていた。
「うっせーよ」
そう、独り言を呟き、同じ内容の文章をチャットに送信した。
俺は、『離席中』のアイコンにチェックを入れてコントローラーを床に投げ出し、軽くため息をついて目を伏せた。
「あーぁ……。つまんねーの」
もしも俺が、なにかの物語の主人公だったら? こんな風にゲームにさえセンスが無い人間なハズは無いだろう。俺だって消費者として、俺のようなつまらない人間が主人公の物語なんて読んだり、見たりしたくはない。
「なんか一つでも才能があったらなぁ……」
誰にではなく、俺自身に問いかけるように、すがるような思いで呟く。もし喧嘩が強かったら、不良にでもなってコンビニに屯するのも良かったかもしれない。少なくとも、現状よりはずっと充足感を感じられたハズだ。
とびきりのイケメンでたくさんの女の子にモテるというのも、それはそれで才能だと思うし、そんな人生も楽しいだろう。
しかし、現実はどうしようもなくつまらない。目指すべきものも、やりたいことだって無くなっていた。
「ま、このゲームも惰性でやってただけだしな。そろそろ頃合いだろ」
俺はそう言って、通算45本目の『二度とやらないゲーム』の棚にパッケージを仕舞い込んだ。
無意味に「 」を続けることの意味 椋畏泪 @ndwl_2nd
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