とても文章力の高い作家さんです。日々の何かから自分が気になる事を拾い上げられる点は将来が楽しみ。今回の習作(だと思います)のみならず御作を胸にもっと大きな作品に羽ばたいてもいいと思いました。
重苦しく内省的なつぶやきでつづく夜の描写へ、ふっとあらわれるねこの存在感が印象的です。でもそれによって、物語の根底にある強い無目的感が取り払われるわけでもなく(髭を剃ろうと思い立つのも、偶然頬にかかった雨によるもの)。でもそれが、ちゃんとまとまっているところに、作品の力量を感じました。