7-2.彼女の家

 その帰りがけのこと。

 夕焼けに空が真っ赤に染まり、影は長く伸びて魚眼レンズで映し出されたみたいにヘンテコな形を為していた。

 帰り道を春森と並んで歩くと、その影もまた後を追うように一緒についてくる。

 そんな中で、オレは今日起きた出来事を振り返っていた。



「しっかし、まさか春森があんなに一輪車乗りこなせるなんて思っても見なかったよ」

「あれでも割と久しぶりだったんだけどね」

「はぁ……。見栄なんか張るんじゃんなかった」



 結局、またしてもからかわれただけじゃん。

 しかも、なぜか大道芸までできてしまうというおまけ付き。

 バレエっぽいことをした時のことといい、今日のことといい、春森はなんでもできちゃう感じだよなぁ~。

 ホント……。

 オレの彼女は、透明人間で、何でもできて、つくづく謎が謎を呼ぶミステリアスな彼女らしい。



「でも、春森ってさ。今日みたいな芸ってどこで覚えてきたの?」

「うーん、それなりに理由があるんだけどね」

「理由?」

「ねえ、三田村君。このあと時間ある?」

「え? 別に構わないけど」

「じゃあ、私と一緒に来てもらえるかな?」

「いいけど……。いったいどこに行くのさ?」



 と言うなり、オレは足を止めた。

 このままついて行っても、また春森にからかわれるだけかもしれないしな。とはいえ、その理由を知りたいっていう気持ちがないでもない。

 だから、イタズラな笑顔を浮かべながら、とっさに五メートル先まで走った春森を見て、ますますその謎について知りたくなってしまった。

 とっさに春森が振り返る。



「私の家だよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る