第6話「ひさしぶりに会ったアイツがずいぶん変わってた」

6-1.偶然の再会~その1~

 登校して早々。



「あれ? 春森さん、今日も休み?」



 と「おはよう」のひと言も言わず、開口一番に陽人からそんなことを聞かれた。

 蛇足的に『今日も』と付け加えられているのには理由がある。実は、春森は平日にもかかわらず、連日休むことが多かったからだ。

 表向きは、通院し続けなければならないほどの病気持ちということになっている――が、その真相は逆もいいところ。



「沖縄にいます」



 ……などと書かれた自撮り画像が今朝方送られてきた。

 もちろん、そりゃあビックリしたさ。んまあ、その驚きはいつも一瞬のことで、すぐに呆れかえっちまうんだけどさ。

 でも、陽人はそうでもなかったらしい。

 オレのスマホを見るなり、唖然とした表情を浮かべてるし。しかも、イスに座ることもできず、中腰でその画像に魅入っちまってる。

 本当にまったく以て、春森は謎だらけだ。



「こういう理由だよ」

「また唐突に沖縄に行くって……。どれだけアクティブなんだよ、春森さんは」

「出席日数ギリギリだけど、成績が優秀だからいいんじゃない」

「しかも、父親は大手銀行の役員で母親は世界的衣装デザイナーなんだろ?」

「だからこそ、ひとりで沖縄になんて行けるんじゃねえの。なんか両親が自宅に家政婦さん呼んで面倒見てもらってるらしいし」



 そういや、自宅も豪邸だって坂下さんが言ってたっけ? ちなみにオレはまだ行ったことがないから、どのぐらい大きいのかは知らない。

 とにかく、今日は春森がいない。

 向こうで透明人間になっていてしまわないかについては心配だけど、そのリスクも背負って沖縄へ行っちまったんだ。

 まあ、幸いにもSNSで連絡は取れるし、今日のところはひとり大人しくしておくか。

 とはいえ、これで誰かと遊んだりする目的がなくなってしまった。



「なあ陽人。今日も部活か?」

「ああ、そうだが?」

「だよなあ。コンクール近いんだっけ」

「遊びの話ならスマン。いまはどうしても時間が欲しいんだ」

「別にいいよ。しっかし、こういうときに彼女が同じ部活に入ってるってうらやましい」

「あのな、会話してるヒマなんてないぞ? とにかく、毎日練習漬けでいとまがない」

「合間にちょっとぐらいはするんだろ?」

「逆に言えば、それぐらいしかない」

「それだけでも、やる気に違いが出るじゃないか。オレなんて、唐突に旅に出られちゃうから困惑するばかりだしさ」

「春森さんの謎加減はいまに始まったことじゃないもんな」

「まあ、そうなんだけどさ」



 だったら、事前に行ってくれって思う――が、春森の場合はその日の気分で出かけてしまうから相談もなにもありはしないのだ。

 ……仕方がない。今日はゲーセンに立ち寄って、ひとりでゲームでもしてから帰るとするか。

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