5-1.求む! 元に戻る方法。その2
「――ねえ。さっきの話の続きだけどさ、やっぱり誰にも黙っててくれない?」
教室を出て、廊下の端にある理科準備室。
ここなら、誰が来ても一発でわかるし、すぐに話をやめることだってできる。
ところが、春森はそんなオレの配慮を無下にするようなことを言い出した。まったく、せっかく病院に行こうって提案したのに黙っててとは何事だよ。
「別にいいけど……。アイツらに話すのは、どうしてもダメ?」
「よく考えたんだけど、しばらくこのままでいいかなって思うの」
「そんな安直でいいのか? 困ってたら、オレを夜の学校に呼び出すだけじゃすまなくなるぞ?」
「それは事実だけど、みんなに迷惑はかけたくないんだ」
「……春森」
気持ちとしてはわからなくないでもない――。
でも、本当にそんなのでいいのか?
オレの中で逡巡する気持ちがあってか、春森へすぐに返事をできなかった。答えをかえせたのは、それから数秒経過してからのこと。
「わかったよ。オマエがそれでいいって言うのなら、オレは最後まで付き合うよ」
「ありがとう……。それとゴメンね、迷惑かけちゃって」
「いいって。それに秘密なんだろ?」
「うん、そうだね――私と三田村君だけの秘密」
「だったら、しばらくはそれでいいじゃん」
オレと春森の秘密――。
なんだかこそばゆい感じがする。でも、いずれは突発的に透明人間になるという問題を解決しなくちゃならない。
そのときに味方が多い方がいいと思うのだが、春森はどう思っているんだろう?
悩む気持ちを心に沈め、オレたちは教室へと戻った。
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