第9話 肉が憎い!

 あらぁ……あっさり、抜かれた。

 本日、投稿した『KAC2021 ~カクヨム・アニバーサリー・チャンピオンシップ 2021~』 の短編ボヤッキーに★の数、簡単に抜かれた。

 それも、たった数時間で……

 ダメじゃん、グダぐだ男!

 お前、女性の心がつかめてないんだよ!

 って、今の俺にも女心なぞ、分かるかい!


 まぁ、いい。昔を思い出しながら、ゆっくりと、冒険の書を書きしたためていこう。

 だが、なにぶん古い記憶、記載すべき復活の呪文を間違えているかもしれない。

 『ふっかつのじゅもんがちがいます』

 うん? 書き間違えた?

 って、やかましぃっ!

 この呪文で動け!

 今すぐ起動しろ!


 テケ! テケ! テケ!

 童貞勇者グダぐだ男は、研修会場に入った。


 いきなりかい!

 まぁ、いいではないか。

 婚活イベントで、寒いボケをかまし続け、客寄せピエロに徹した俺に恋人という春は来なかった。

 まぁ、当たり前のことである。

 だが、男たちの軽いいじりのおかげで、女性陣に対して一言ぐらいは声をかけられるようになっていたのだ。

 いままでの人生で一言も声がかけられなかったのが、できるようになっていた。

 これは凄い成長だと思わないか!

 1から2にするのはたやすい。

 だが、0から1にするのは非常に難しいのだ。

 まさに、無から有が生まれた瞬間である。

 だが、所詮は1である。

 話しかけても、女性から冷たい目で見られる始末。

 その一言の後が続かない……惜しい!

 まるで近寄るな! この豚が! と言わんばかりの軽蔑の眼差しを向けられる。

 だが、残念ながら俺の性癖はMではない。

 どちらかと言うとSだと自認している。

 いや、もしかしたらSS? 3Sかもしれない。

 だから、そんな軽蔑の眼差しを向けられたとしても、ちっともうれしくなんかないのだ。

 男友達がそんな俺の肩をバンバン叩く。爆笑しながら。マジ殺す!


 そんな無為な婚活時間が、ある程度過ぎた後の事だった。

 俺は、また、ギルド長の命令で研修会に赴くことになったのである。

 今回の研修会は長丁場!

 だが、うれしいことに、飯付き! 酒付き! である。

 これで、一食分の飯代がうくのだ!

 俺は、ポケットにビニール袋を忍ばせて、ウキウキと研修会場に向かったのである。

 なにせ、こういう酒が出る会場では、飯が余るものなのだ。

 もったいない!

 非常にもったいない!

 これを残った飯を持って帰れば、次の日の夜ゴハンもゲットなのだ。

 ただ、このミッションは非常に難しい!

 食中毒予防のため会場の守衛に見つかると、即ゲームオーバーなのである。

 だから、よい子のみんなは絶対にマネしてはいけないのだ!


 研修会は、なんかむっさいオッサンがしゃべってた。

 初級剣士の心得がどうとか……

 コンプライアンスがどうだとか……

 魔王の誘惑に心を奪われるな! とか……どうでもいいわ!

 以上!


 そして、ついに、待ちに待った、お食事タイムである。

 今日のメニューは肉だよ! 肉!

 奮発したなぁ! オッサン!

 袋持ってきておいてよかったよ! まじで!

 などと、手をコネコネしながら、ギルドの組合長のつまらない挨拶が終わるのを今か今かと待っていた。

 広い座敷の会場に、机が川の字に3列、長く並ぶ。

 その机の両脇に、参加者たちが順次座っている。

 一つの机の列に30人と言ったところだろうか……

 ならば、この机の料理だけで、俺が持ってきたビニール袋は一杯になるな。

 などと、思いながら、俺は一つ一つ皿の上の肉を確認しながら机の下流へと目を移していった。


 しかし、次の瞬間、俺の頭から、肉料理が消えた。

 先ほどまで、どれだけ袋の中に肉が詰め込むことができるだろうかなどと、よだれを垂らしながら考えていた俺の頭が、ドカンと何かに叩かれたような衝撃を受けたのだ。

 別にふざけていたから、どつかれたわけではないぞ!


 そう、視線の先には、あの綾波レイ似の女神さまが座っていたのである。


 なんで、俺、今の今まで気づかなかったんだろ!

 俺のバカバカバカ!


 同じ机の列の座ってはいるものの、その距離は遠い。

 とてもじゃないが、声が届く距離ではない。


 もっと、近くに座ればよかった。

 できれば隣がよかった。

 なんで俺は、肉に目を奪われたんだ……

 クソ!

 この時ほど肉料理を憎んだことはなかった。



【グダぐだの今日のつぶやき】

 客寄せピエロで頑張っている俺、輝いている! などと思っているのは自分だけだ。

 立場を変えて考えてみればわかること。

 婚活会場で、ゲラゲラと下品に笑っている女の子がいたとしたら、あなたは声をかけるだろうか?

 俺なら、かけない。絶対にかけない。

 なぜなら、俺はおしとやかな綾波レイがタイプなのだ!

 だが、俺にはそれが分かっていなかったのだ。






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