第6話 女神さま降臨!

 24歳で大学院を修了した俺は、教授が用意してくれた超優良ギルドの面接試験で、毒を吐いていた!

 根がまじめな俺は、下級賢者養成大学院の中でも結構、教授受けが良かったのである。まぁ、タダの奴隷気質ってやつかも知れませんけど。

 そのおかげで、当大学院から、毎年、就職が決まっている超優良ギルドの推薦枠をいただいたのである。

 これで、俺も、賢者としてギルドに参加し、多くの冒険に旅立つのだと夢を膨らませたものである。

 しかし、目の前に置かれたトラップに俺はひかかってしまった。

 こんな簡単なトラップに引っかかるやつは、そうそういないだろう。

 だが、ダンジョン攻略経験が少ない俺は、その甘いトラップにまんまとひっかかったのだ。

 それは、面接の最後に発せられる「何か質問ありますか?」という、単純なトラップである!

 ちょっとダンジョンを経験している冒険者なら、それが単純なトラップであると見抜くことはたやすい。

 あえて、見ないふりをするもよし、トラップを正確に解除するもよし。

 それは、それぞれの冒険者次第なのである。

 しかし、俺は違った……

 そのトラップが、優しい顔をしたミミックであるともしらず、ついつい、その宝箱に手を伸ばしてしまったのだ。

 そう、なぜか、ここでヤンキーたちと培ったスキル。ボケミサイル(単発)を発動させてしまった。

「社長! 生きてて楽しいですか?」

 発射されたミサイルが白煙を引きながら、ぐるりと180度回転する。そして、勢いよく俺自身に着弾、爆発した。

 当然その後、教授に呼び出され、2時間説教を食らったのは言うまでもない。


 そして、おれは、めでたく、フリーターへとジョブチェンジしたのであった。


 まぁ、ココから先、いろいろと冒険をしたのであるが。

 それを語っていては、女神さまがいつまでたっても登場しない。

 なんてったって、この話は、女神さまとの異世界転移の話である。

 ということで、

 何やかんやで、俺は、30歳となり勇者へとジョブチェンジしていたのであった。

 まあ、勇者と言っても童貞勇者、しかも一番下の階級である。

 そのため、講習会や、説明会など、面倒ごとは俺に丸投げされた。


 俺は、素直なイイ子である。

 そんな命令をホイホイと引受。そそくさと会場に出向いていった。

 受付をすませ、その先の少々重いドアを押し広げる。

 そこには、パイプいすが所狭しとずらりと並ぶ広い会場。

 俺は、前の方の空いている席にちょこんと座った。

 なにせ、ど近眼であるから、前に座らないとスライドが見えないのである。


 だが、講演開始まで、まだまだ時間が残っていた。

 かといって、一人で来た俺は話す相手もいる訳でない。

 この当時、スマホなんてなかった。たぶん。

 しかも、俺のガラケーは、通話しかできない。いや、メールもできたかもしれないが、送る相手がいなかったので、その機能を使ったことがなかった。

 今なら、手持無沙汰になればスマホをスワイプ。時間を潰す事なんて簡単なことだ。

 しかし、そのような手段を持たない当時の俺は、時間を持て余していた。

 することが無く、会場を見回す。

 そこには、似たような職業の者がいたるところから集まっていた。

 老若男女。性別も年齢もさまざまである。

 後ろを振り返った俺は、会場のはしから、様子を伺っていく。

 ジジイ、ジジイ、ババァ、ジジイ、ジジイ、ババァ、ジジイ、ジジイ、デブ!

 だが、俺の目が、ピタリと止まった。

 そこに、座っている一人の女性に目を奪われたのである。

 ――綾波レイがいる……

 まじでそう思った。

 赤とグリーンのチェックのワンピースを身にまとい。

 背筋をピーンと伸ばして座る姿は、神々しい!

 その澄んだ瞳は、まっすぐに誰もいない壇上を見つめていた。

 女神さま?

 その姿に息をのんだ俺は、ただただ、じーっと見つめていた。

 まるで大聖堂の天女をあがめるかのように、頭の中は真っ白だった。

 どれぐらいの時間見つめていたのだろう。

 壇上に講演者が上ってくると、拍手が巻き起こっていた。


 彼女は、俺の視線に気づいたのか、軽く会釈をした。

 咄嗟に俺は、前へと顔を振り戻す。

 そこから先のことは、頭の中がパニックで、よく分からない。


 ウキウキとしながらギルドに戻った俺は、ギルド長から激しい叱責を受けてしまった。

「お前! 何しに行ったんだよ!」

 なぜなら講習会の内容を何一つ覚えていなかったのだ。

 オッサンの顔なんか覚えてられるか!

 俺の頭の中には、綾波レイ似の女神さまの姿で一杯だったのだ。



【グダぐだの今日のつぶやき】

 出会いは突然にやってくる。

 それが運命なのかどうかは知らないが。

 きっと、心が叫んでる。

 心の声に耳を傾けて。

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