大同の妻の憂鬱

「お義兄さん、これからどうします。この事実を図師にぶつけますか」

「否、先ず大同会長に報告する。佐藤さん、連絡したら東京に来て頂けますか。その際の費用は負担します」

「勿論ですわ、何時でも行けるよう準備しておきます」

「隆君、直ぐ出立する」

「自見さん、あの雨の日のこと、大同会長に報告するの」

「お義兄さん、なんですかその雨の日のこととは」

 隠す必要もないと、隆にそれを話した。コーヒーとケーキを置きながら、峰子も驚きを隠せないようだった。


 最終報告書と真地間のパソコンを鞄に入れ、隆が運転する車で駅に向かった。駅に到着し峰子さんに宜しくと言う自見に、お義兄さんも東京に着いても油断しないで下さいよ。


 東京に向かう新幹線の中で、この報告は一層大同の健康を損ねるかもしれないな。大同は自分が癌であることは、誰も知らないと思っているようだが、自見は大同の妻から聞いていた。


 大同の妻美土里は、父が大同を気に入り自分の承諾も得ず勝手に婿養子に迎えたが、幸助の温和で飾らぬ性格、そして両親が亡くなるまで実の親のように尽くしてくれたことを今も感謝している。

 大同は昨年過酷な社長業務を終え会長職に退いたが、やはり会社が心配のようで心休まることがないようだ。

 加えて、春の健康診断で癌が発見され、それを妻の自分にも言わない、

 どんなに苦しいことだろう。


 夕方頃自見が来るが暫く二人だけにしてくれ、用事が済んだら呼ぶから。久しぶりに自見さんに会えるけど、どうやら主人は何か自見さんに頼んだみたい。そうぼんやり考えていたら、自見が訪ねて来たので直ぐ知らせた。

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