親友

 自見は大同にとって唯一無二の親友だ。自見の親父に連れられて飯屋に行ったことは良く覚えている。自見の家も裕福ではないが、父親は息子の友達の大同を大事にした。


 しかし、自見は一度もそんな話はしたことがない。昔の話をしたがる大同を、そっと目で抑える。何処までも謙虚だ。

 それだからこそ、この匿名メールが事実かどうか、それを託した。


 経過報告書は、図師がこの自殺に大いに関与していることが書かれ、単なるパワハラではなく、何者かが画策した痕跡があると、示唆していた。


 最終報告書の内容如何では、懲罰委員会も設置することも頭に入れておかなければならないだろう。

 勿論、そんな結果になって欲しくはない。出来たら穏便に真地間の家族には相当の見舞金を払うことで解決を図りたい。


 今の大同には、社長時代の厳とした姿とはほど遠いものがある。春の健康診断で肝臓に癌が発見された。誰にも言ってないが、医者からは持って後2年だと宣告された。

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