大同の思惑

 匿名のメールが来てから、大同は、事態はただ事ではないと思っていた。そして図師の報告が胡散臭いと思った、仕事の悩みであれば現場を預かる責任者として、警備隊の隊長を呼ぶと同時に本人に事情を聴かなければならない。その経過が何も書かれていない、これでは放置していたのと同じだ。


 それに比べ、自見の警備課長時代のことを思い出した。自見は問題が発生すると、必ず現場に駆け付けた。24時間、365日、警備課長となって1日たりとも手を抜いたことはない。酒もタバコも嗜まず、ひたすら業務に邁進していた。


 その仕事ぶりは他警備課長の模範と言っても褒めすぎではなかった。自見夫婦は子供がいないこともあったが、時々自宅に若い社員を招き親身に相談に乗っていた。


 定年退職送別会には夫婦で呼ばれた。支社員こぞって送別会に参加し、それぞれが感謝の言葉を述べ、同時に一抹の悲しさ、寂しさを訴えたが、それを補うに余りある夫婦の笑顔で、終始和気藹々の内に送別会が終了した。それぞれが、胸に染み込むような心温まる送別会だった。

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