行動記録 6日目 水曜日

間一髪

 僅かながら自殺事件の真相が見えてきた。そして、その鍵を握っているのは真地間と従妹の村越順子だろう。これは直に会って確かめなければならない。

 

 自見の若い頃は喫茶店が林立していたが、昨今見なくなった。佐藤女史は、仕事上人目を避けることもあるので、手頃な喫茶店を知っている。

 茶色の建物は、落ち着いた雰囲気を醸し出している。中に入ると、レコードからクラシック音楽が静かに流れていた。ここなら、じっくりと話が聞けそうだ。


 佐藤女史と自見がコーヒーを頼んで待っていると、入口から中年の女性が入ってきた。そして、自見に近づくと村越ですと名乗った。

 顔を見て、自見は思い出した。そうだ、支社に訪れたとき会議室に案内した事務員がこの女性だったのか。

「自見です、その節はお世話になりました」

「否、私こそもっと早くお会いすべきでした」

 早速本題に入り、村越順子に何もかも全て話した。そして、知っていることがあれば、些細なことでも構わない、遠慮なく言って欲しい。


 自見はコーヒーを追加し、佐藤女史と村越順子も紅茶やケーキを追加した。事は重大だった、そしてこれが、決め手になった。


 雨模様だったので、3人とも傘を準備していたが、案の定外は雨が降り出していた。佐藤女史と村越順子は先に駐車場に向かい、一人自見だけが国道沿いを歩いていた。

 少し強めの雨が傘越しに頬を掠める。幾分前かがみになって歩いている自見に、歩道を疾走してきた自転車が突っ込んできた。避けながら、国道に飛び出しそうになるのを何とか堪えた。その横を大型トラックが猛スピードで走り去った。


 なかなか来ない自見を心配して、佐藤女史が見に来た。遠ざかる自転車を指さし、今起こったことを佐藤女史に話した。聞いた佐藤女史は蒼ざめていた。

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