やるせない切なさ

 録音テープは動かぬ証拠だが、今ひとつ真地間が自殺した要因が掴めない気がした。佐藤女史も同意見だった。

 自見は、嵯峨美智子に朋美と図師がホテルに入って行くのを見たのは貴女ですかと聞くと、意外なことにそれは真地間からだと言う。


 つまり真地間は目撃したのだ。それは最近二人で会うことを避けるようになったことに不審を抱き、そっと後をつけて見た。

 まさか、まさか、奈落の底に落ちるとはこのことかもしれない。真地間は失望した。と、同時に職場の嫌がらせは1年以上も続いている。栗木さんが何かと気遣ってくれるが、もう限界かもしれない。


 日々痩せていく息子を母親も妹も心配していたが、ふと真地間は朋美に腹いせをしたくなった。朋美に図師との関係を知っていることをメールで送った。そして、僕は君に失望した、これから自殺する、と。

 しかし、返事は来なかった。


 いつまでたっても起きて来ないので、2階の息子の部屋に入ると、鉄製ベッドのフレームに紐を結び、それを首に巻きベッドからずり下がり、横たわるように死んでいた。

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