おまけその2ー1 クリスマスの準備はお早めに

「お待たせしました」

「俺も今来たとこだから。座って」

「失礼します」


秋の学祭のバスケ大会も終わり、ここからは普段のデートと1ヶ月半後に迫るクリスマスプレゼントとの金銭バランスを考え始めなければならない頃。

俺は、石橋さんに呼び出されていた。

正確には歩が石橋さんに「相談がある」と呼び出されて、その付き添いだ。

石橋さんは三尋木と付き合っているし、俺は別に歩が石橋さんと2人きりで会おうが構わないのだが、歩が「文ちゃんにも悪いでしょ」と俺の付き添いを要求してきた。

待ち合わせ場所は、清キャンからほど近いハンバーグで有名なファミレス。

サークルで使う体育館やキャンパス最寄りの駅からはやや離れており、むしろここは近くの高校に通う高校生や、家族連れを対象としている。


「それで、相談事ってなんですか? 多分文ちゃんのことなんでしょうけど」

「ご名答。文と1番付き合いが長い広橋に聞きたいんだけどさ、文がクリスマスに貰って喜ぶ物って何だと思う?」

「早くないですか?」


そんなことはない、と石橋さんと俺は首を同時に横に振った。

俺からもこの反応だったのは、歩にとって意外だったらしい。


「えっ、大輔ももうクリスマスプレゼントのこと考えてるの?」

「当たり前だろ。結局いくらになるかはともかくとして、今からそれ向けに金貯めてりゃ選択肢も増えるんだから」

「そんな高い物欲しいなんて思ってないのに」

「こっちの気持ちの問題ですよ。ね、石橋さん」

「そういうこと。めちゃくちゃ『これだ!』ってなったやつが高くて手出せないとか、嫌だし。それにクリスマスディナーの予約とか早いところは先月末から受け付けてるし」

「そうそう。これくらいが普通よ」

「そうなんですね。大輔、ありがと。帰ったら一緒に探してみよっか」


目に見えて、歩は上機嫌になった。

どこかのタイミングで一緒に選びたいし、歩からのプレゼントも楽しみだ。


「そういうわけでさ、ちょっと広橋には探りを入れて欲しいわけよ。ここの飯代が情報料」

「はーい。お安い御用です! なる早でお届けします!」

「サンキュー。和泉ってどこかディナーの予約とかしてんの?」

「いえ、そっちはまだなんですけど……歩はどこか行きたいとこ、ある?」

「デートは行きたいけど、特別にレストランの予約とかは別にいいかなあ。文もそういうタイプのはずですよ」

「かといって男から『家でもいい?』はあんまり言いたくないな。石橋さんもそうですよね」

「そーそー」

「なるほど。じゃあそっち方面でも文ちゃんから石橋さんに希望伝えるように仕向けますね」

「マジで助かる。恩に着る」

「デザートでパフェも食べていいですよね?」

「オプションかよ!」

「はい♪」


まあ、流石にそれくらいは歩も頼んでいいとは思うけど、ちょっと振り回された石橋さんにも同情の余地があるので、俺も少しくらいは協力をすることにしよう。

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