第93話 君と僕との高校時代

がっくりとうなだれる男子2人組をよそに、俺は真奈美の餃子を堪能した。

もちろん、全部食べさせてもらう形だ。


「ごちそうさま。美味しかった」

「お粗末様。冷凍食品、絶対引っかかると思ったんだけどな」

「3年も真奈美の手料理食べてりゃわかるって」

「櫻木さん、ずるくないですか。こっちは付き合ってまだ2ヶ月ですよ」

「その分のハンデが冷凍食品だろ」

「うぐっ」

「大輔、言い訳しない!」

「はい……」


完全に和泉が縮こまってしまい、広橋に頭を下げ続けることになった。

一方、三尋木は外れたことのショックより、1日自由権の方が嬉しいようで。


「文、ごめん……」

「いいんです。私がもっといっぱい剛さんにお料理作ってあげてればよかったんですから。これからいっぱい一緒にご飯食べましょうね」

「いいのか……? 許してくれるのか?」

「はい。朝昼晩、全部私が作ります」

「えっ」

「講義ある日は早起きしてお弁当作ります」

「あの」

「剛さん?」

「はい……」

「文、これを機にバッシーの家住んじゃおう」

「いいね! 剛さん、明日は、いや今週は絶対泊まりますからね!」

「え、いや、1日自由権じゃ」

「剛さんを好きにできるのは1日だけですけど、剛さんの部屋を好きにできる期限は決められてないですから」

「いいぞ文ちゃん、いけいけー!」

「煽るな、煽るな」

「いや、マジかぁ……」

「バッシー、なんか不都合あんのか?」

「いや、ないんだけどさ、文は……いいの? 負担にならない?」

「1人分も2人分も同じです。将来は3人分とか4人分になるかもしれないですし」

「えっ、あ……うん……」


バッシーが、顔を真っ赤にして俯いてしまった。

三尋木に「まだ学生だから気が早い」などと言って夏休みの頃の自分にブーメランをぶつける行為は、流石にやめておいた。


「ほら、早く食べないと冷めるよー。愛しの彼女の味をしっかり舌に覚えなさい、ふたりとも」

「「はい……」」


バッシーと和泉は、しっかりと自分の彼女の作った餃子の味を噛み締めていた。

残った冷凍餃子は、真奈美と俺で平らげた。






「あー、美味しかった。なんだかんだ冷凍も美味しいんだよね」

「な。去年チャーハンにはマジで世話になった」

「チャーハンは正直手作りより美味しいかもだよね」

「真奈美ちゃんが言うなら相当だね。私、あんまり冷凍の食べたことないから」

「高校時代とか、弁当じゃなかったの?」

「ウチ、学食あったんですよ」

「へぇー。そりゃまた珍しい」

「学食あるのが当たり前だと思ってましたね。大学にも実際ありますし」

「なるほどなー。バッシーって弁当だっけか」

「そう。でも早弁して昼は購買でパン買ってサッと済ませて、体育館で練習してた。あの頃はよくあんな動けたなと思うわ」

「情熱的でカッコいいです!」

「そう? ただの運動バカだよ」

「剛さんと同じ高校通ってみたかったです。この中だと真奈美ちゃんと櫻木さんだけですもんね」

「そういや俺もサクたちの高校時代の話聞いたことないな。和泉ってなんか知ってる?」

「ある程度は。馴れ初めくらいですね」

「え、大輔ずるい! 私も聞きたい聞きたい! 話してください!」

「そんながっつかないでよ、歩。それじゃ慎吾、まず何から話す?」

「んー、最初から? 確かに詳しくは話してなかったしな」


こうして、俺と真奈美の高校時代の話が始まった。


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