第83話 真奈美のいない3日間(2日目)

真奈美が帰ってくるまで、あと24時間ほど。

俺は、和泉の部屋に来ていた。

和泉は徹夜までしてゲーム三昧だったようだが、いい加減ソロプレイにも飽きたらしく、和泉に誘われてゲームをすることになった。

和泉の好きなゲームは多岐にわたるが、意外と対戦ゲームは少ない。

俺ができそうなのはマリオカートかスマブラくらいで、一度スマブラで挑んだらボコボコにされた。1機ハンデつけてもらっても無理だった。

マリオカートはマリオカートでコースを熟知している和泉に敵うはずもなく、俺は和泉がゲームをするのを眺めているだけとなっている。


「櫻木さん、一緒にこれやりません? オンラインで協力プレイできますよ」

「んー、帰ったら買ってみるかな。普段こういうの1人で黙々とやってんの?」

「いや、歩とやってますね。これも歩とのマルチプレイサーバーです」

「へー。広橋もゲームするんだなあ」

「最初は俺に付き合ってもらってただけなんですけど、最近はちょくちょくあっちからも誘いが来ますね」

「ほお。お互いの家に入り浸ってるもんかと思ってた」

「なんだかんだ家遠いっすから。昨日みたいな雨の日とかは基本的にこんな感じです」

「そういうもんか」

「櫻木さんは半同棲ですもんね。羨ましいですよ」

「こういう日にやることなくて寂しく枕を濡らすことになるぞ」

「普段の幸せ考えたら大きなプラスじゃないですか。こういう時になってそれに気づくんですよ、そういうの」

「……和泉って、なかなか深いこと言うな」

「恋愛だけなら櫻木さんより経験数多いですからね」

「え、嘘」

「ゲームで、ですけど」

「なんだよ、それ」

「櫻木さんもどうです? 色々参考になるかもですよ」

「何がだよ。ああいうのって付き合って終わりだろ」

「それはギャルゲーですね。エロゲーは付き合ってからも続くんで。むしろ付き合ってからが本番なんで」

「和泉、そういうの広橋にバレてないの?」

「バレるというか、見せましたよ。俺はこういうのやってるって」

「えっ」

「言っときますけど、俺はエロゲーには最悪セックスシーンなんていらないって思ってますからね。シナリオの良し悪しが俺の評価なので」

「……それ、エロゲーじゃなくてよくないか?」

「エロがないと売れない的なアレもあるんでしょうし、しょうがないですよ。今となっては参考資料として活用できるんでいいですけど」

「……参考資料?」

「エロゲーのシーン巡って『次こういうのやってみよう』とか歩と話してますね」


俺の後輩が、ここまで爛れているとは思わなかった。


「櫻木さんもどうです? この作品のこの子とか、西野にちょっと似て――」

「あ?」

「すいません、なんでもないです」


和泉に渡されたパッケージを眺める。

……確かに、似ている。


「似てるでしょ?」

「……多少は」

「まあまあ、やってみてくださいよ。後悔させないんで」


俺は和泉に従って帰宅し、その子と付き合うルートを読み進めることにした。

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