第82話 真奈美のいない3日間(1日目)

今日、真奈美がいない。

というか、しばらくいない。

合宿で約束した月島との釣りに自分抜きで行った仕返しなのか、女子だけのプチ旅行を自ら主催してしまった。

こちらもバッシーやウタを誘って麻雀を打つか、和泉も誘って男子会としゃれこもうかと思ったのだが、バッシーはバイトの緊急代打、ウタは学部の同期飲み、和泉は1人でゲームを満喫したいとのことで、少なくとも初日は誰の予定も空いていない。

月島や平石を呼ぶ手もあるが、「彼女いなくて暇だから」と気軽に呼び寄せられるほどまだ親交が深まったわけではない。

ということで真奈美の目論見どおり、俺はひとり寂しく今日を過ごすことになる。


久々に自分でメシでも作るか、と思い立ち冷蔵庫を開いたのが午前11時。

何も案が思いつかないので、とりあえずチャーハンにした。

やっぱり、不味くもなく美味しくもない仕上がりになった。

元々俺が作るとこんな味なのだが、今日はいっそう微妙な仕上がりだ。

真奈美と一緒に食べない食事が、こんなに味気ないとは思いもしなかった。


こんな日に限って外は雨。

どんよりと曇った空から、地球に恨みでもあるのかと思うくらいに雨が強く降りつける。

これが夜遅くまで上がらないとのことなので、本当に気が滅入る。

真奈美たちの旅行先でも降っているのだろうかとアプリをチェックしてみると、どうやら見事に晴れているらしい。


とりあえずゴロゴロ転がって独りでもできる何かを捻り出そうとしたが、ナニしか出てこない。

いざナニをするにしたって、もう真奈美しか受け付けないので無駄だ。


しかし、9月の末だというのにクソ暑い。

気温というより、どちらかといえば湿度の問題だ。

体の上をナメクジが這っていると言われても納得できるほどのジメジメとした空気感。

エアコンの「ドライ」モードをONにしたはいいものの、それでも気持ち悪い。


いっそこういう時は汗をかいてスッキリすればいいと誰かが言っていたような気がするが、室内で汗と言ったってどうしようもない。

外に出て汗をかこうにも、雨の中じゃ……いや、ひとつだけある。室内で汗をかける所が。


電車とモノレールを乗り継いで、墨キャンの南にある大型銭湯に入る。

露天風呂もあることがウリなのだが、今日の大雨じゃ客足も少ない。

俺の目当ては風呂ではなく、サウナだ。

中途半端な気温で湿度が高いのだから、イライラが募る。

なら、いっそ超高温の部屋にいってしまえばいい。


案の定、客はまばらだった。

サウナと水風呂の往復を繰り返して、最後にひとっ風呂浴びる。

数時間前のジメジメとした不快感は消え去り、爽快感が体を包み込む。

風呂上がりのコーヒー牛乳をグイッと飲み干して、マッサージチェアに体を預ける。


そういえば、真奈美にマッサージされたこともないし、したこともないな。

「したい」と言ったところで多分変態扱いされるのはわかっているし、結局行為に突入するのはなんとなく察しがつく。

けれど、機械によるツボ刺激よりは、やっぱり彼女にしてもらった方が何倍も気持ちがいいのも事実だと思う。


結局、不快感が消え去ろうが、俺は真奈美と何をしたいかで頭がいっぱいになるのは変わりなかった。


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