第57.5話 ギャンブルはほどほどに
拡声器を通した、今日の花火大会終了を告げるアナウンスが聞こえた。
俺の腕の中で空を見上げていた真奈美が、もぞもぞと動き出す。
「終わったね」
「終わったな」
もうちょっとだけ真奈美の背もたれでありたかったが、なに、家に帰ってからもたっぷり時間はある。
今日はウチに泊まるとか、特に何か約束をしたわけではないけれど、なんとなくそうなる気がした。
「駅行くか」
「そうだね」
「バッシーと三尋木、うまくいったかな」
「いってると思うよ」
「俺も、そう思う」
「どっちから告ったか、賭ける?」
「いいぞ。俺、三尋木な」
「いーや、逆だね」
「ほう、後悔しても知らんぞ」
「望むところだよ」
「で、何賭けるんだ」
「どうしよっかなあ、後で決めよう」
なぜだろう。
急に、負ける気がしてきた。
そして、とんでもない要求をされそうだ。
「あ、ほら、いたよ。おーい、文ちゃーん! バッシー!」
ぶんぶんと手を振る真奈美に、2人が気付いた。
2人の手を見ると、2人がどうなったかは一目瞭然だった。
「おめでとうで、いいな?」
「いいよ。ありがとう」
「あの、櫻木さん、色々お世話になりました」
「いいってことよ」
「なに、サク、どういうこと」
「ん? 俺が三尋木にバッシーの趣味嗜好その他諸々全部教えただけだぞ」
「何してくれてんの!?」
「俺も色々三尋木には世話になったから、お礼の情報だよ」
「道理で俺の好みにピンポイントでズドンズドンと来ると思ったら……」
「……あの、ごめんなさい。私が無理矢理聞き出したんです。櫻木さんは悪くありません」
「文も悪くないよ。むしろ、俺のこと好きでそうしてくれたことが、嬉しいかな」
バッシーが三尋木の頭を撫でると、三尋木はすっと目を細めて、その体をバッシーの胸に預ける。
「……さて、1つ質問なんだけど」
「なんだ」
「告白は、どっちから?」
「……俺から」
ふふん、と勝ち誇った表情を浮かべる真奈美。
頭にクエスチョンマークを浮かべる2人には、この失礼な賭けの内容は伝えないことにした。
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